「意味不明の「なんちゃって」映画」プロメテウス tochiroさんの映画レビュー(感想・評価)
意味不明の「なんちゃって」映画
「遊星からの物体X」、「トータル・リコール」、「アベンジャーズ」と観て来て「この夏のSF映画はなかなかよくできている」と、最後にとっておいたこの作品を楽しみにしていたのに、まさかリドリー・スコットの映画で、ここまで手ひどく裏切られるとは思ってもいなかった。
評価は1だが、これはそれ以下の選択肢がないからであって、本当は0どころかマイナスでもつけたいところだ。まだ観ていない人には「こんな映画は観に行ってはいけない」と、声を大にして言ってあげたい。映画を観てこんなに腹が立ったのは久し振りである。
そもそも散々「人類はどこから来たのか、その起源は?」と前宣で煽っておいて、「なんちゃって、実は本当のテーマはエイリアンの起源でしたチャンチャン」というのは、まるで詐欺ではないのか。製作者や配給会社はこれを恥とも何とも思わないのか。
冒頭異星人のDNAが拡散して行く描写はあるが、これが「人類の起源の謎を解く」ということなのか。世界各地に残された壁画からその恒星系を目指して調査隊が赴くが、その恒星系にしてからが他の銀河にあると言われたかと思うと「8億キロ(2667光秒)の彼方」みたいに言われたりして、全くいい加減(翻訳が悪いのかもしれないが)だし、調査隊が目的の惑星に着いてからも母船ごといきなり着陸したり、未知の生物に対してまるで野良犬や野良猫に対するように安易に接して挙句に噛まれるとか、有り得ないほどのいい加減さで話は進む。
圧巻は体内にエイリアンベビーを宿したエリザベスが、自動手術機械で開腹して摘出した後、ろくに縫合もせずホッチキスでバンバンバンと仮止めしただけで、養生もしないまま元気に走り回ることだ。本当なら傷口が開いて、出血多量で死んでしまうだろうに、時々うめき声をあげるだけとは・・・。
ストーリーの流れに全く必然性(リアリティ)がなく、人物描写も薄っぺらいものだから、本来もっといい味を出してもいい船長も影が薄いまま特攻をしかけて終わってしまう。人類を誕生させた異星人がなぜ地球人を呼んだのかも謎のままだし、観終わった後の満足感が全然ない。
リドリー・スコットは一体何を思ってこんな作品をつくったのだろうか。