善き人のレビュー・感想・評価
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妄想の崩壊。
久しぶりに見たぞ!V・モーテンセン!
と思ったら、すでに2008年に製作されていた作品だった。
(イースタン・プロミスの一年後じゃないの)
日本公開が2012年、私は名画座で更に遅くなってしまった。
いや~でもカッコいい^^;
もとより、こういったもの静かな役の方がこの人には似合う。
平凡で善良な大学教授のジョンが辿る、忌まわしい歴史。
観るまではタイトルからの内容を違う角度で捉えていた。
確かにジョンは善良な一市民だったが、ふとしたきっかけで
ナチスへと入党せざるを得ない状況に陥っていく。
これはほぼ強制に近く、彼の意志とは程遠いものだったが、
どういう訳だか残酷な運命は、彼の家族からも、親友からも、
どんどん彼を遠ざけていく。もはや抗えない歴史の波に呑まれ
彼自身、何を選択をすればいいのかさえ分からなくなっていく。
これは彼が善人かどうか、云々、のことではなく、
誰もが彼のような選択を余儀なくされていく例を挙げている。
私にはそんな風に思えた。
親友でユダヤ人のモーリスを助けたい自分と、勢力に抗えない
弱い自分。何とかして…と思い立った時にはもう遅く、親友は
収容所へと送られていた。。
この人の決断は、冒頭のアンとの一件から見ても常に受け身。
自身でガンガン突き進むような性格ではないので、土壇場で
決断力を欠いているような気がする。母親とのことも、妻との
別れもそう。のちに妻に言われた一言は、彼を愕然とさせる。
しかし彼のような平凡な市民は数多くいたはずで、ほとんどの
ドイツ人はそんな風に事態を受け容れるしかなかったそうだ。
自分だったらどうよ?と聞かれれば、私にも分からない。
少なくとも大切な人は救いたい。それは誰の心にも同じことだ。
元が舞台劇ということで、妄想?部分でそんな感じを受けた。
彼が収容所で事態を確認した時、その救われる夢も崩壊する。
(テーマは重く観応え十分ながら、要所で尻切れるのが勿体ない)
「普通」であることの罪
戦争映画で、レジスタンスは概ね善として表現される。ナチスに従った人々は、悪人か意志の弱い偽善者だ。
この映画の主人公はナチスを認めてはいないが、時代の流れに翻弄され、どうしようもなく押し流されて行く。だから、欧米のナチス嫌いの人々は、この主人公をあまり評価しようとしない。
しかし、日本人なら分かるはずだ。我々の親や祖父母の世代で、戦争の最中に大っぴらに反戦を叫んだ者が、どれだけいただろうか。
日本人ならば、この主人公の苦悩が分かるはずだ。
最近は、日本が欧米と戦争をしたことや、ドイツが同盟国だったことを知らない若者もいるそうだが…。
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