「まるで和製『マルタの鷹』」外事警察 その男に騙されるな 初台験さんの映画レビュー(感想・評価)
まるで和製『マルタの鷹』
ドラマ版は全部は観てないけど、ラストは渡部篤郎が刺されて終わりっていう落ちだったと思いました(^_^)
しかし死んだと思ってたけど実は生きてて、警察に復帰して・・・という流れで今回の劇場版に至るということね。
渡部篤郎主演の刑事ドラマということで、さらに画面の乾いた暗い感じもあいまってどうしても『ケイゾク』を連想しちまいます(@_@)
でもケイゾクより全然こっちの方が面白いし、何よりハードボイルド感が半端ない\(◎o◎)/
いや、むしろこの暗い画面と淡々と話が進んでいく様子、さらに一般人が事件に巻き込まれていく様子はフィルムノワールって言った方がいいかな?
とにかくドラマ同様渡部篤郎扮する住本の非情さったらない(-_-;)
民間人の過去の闇の部分を調べ上げて、それをネタに挑発して強制的にスパイに仕立てるその腐れ外道っぷりはさすが!!
最初は腰を低くして丁寧に話すけど、徐々に命令口調になって精神的に追い詰めていく展開はまさに「公安の魔物」(;一_一)
そこに何の躊躇も感じられない、むしろ子供みたいな天真爛漫さすら感じられて、まるで天使と悪魔が共存してるかのような人間離れした下衆野郎。
これは渡部篤郎じゃないとできないな~(+_+)
余貴美子の官房長官の事なかれ主義っぷりも、まさに日本の政治家並びに官僚の「臭いものには蓋をしろ」感がすごくリアル。
石橋凌と遠藤憲一の貫録たっぷりの演技もいいなあ~(^_^)
真木よう子のシーンは全体的に顔をアップで映してて、ぐらぐらするカメラワークも閉塞感と不安感を掻き立ててていいですね~。
NIS諜報員のキム・ガンウも、最後協力して核爆発を抑えるけど、最後まで決して相容れない信念と行動理念を持つ役を見事に演じ切ってる。
尾野真千子も「あんな腐れ外道にもう二度と騙されない!!」と気負ってはいるが、結局一緒になって真木よう子を落とすのに一役も二役も買ってるし(-_-;)このいとも簡単に流されていく演技もさすがです。
在日の科学者を演じた田中泯も良かったな~。
とにかく家族を置いて韓国に渡ってしまったという罪悪感と、自分の技術力で核爆弾を開発したいという科学者としての虚栄心がないまぜになり、後悔しながらもどこか達成感を感じさせる難しい役柄を見事に演じきってると思う。
そしてびっくりしたのはラスト。
「あのDNA鑑定書・・・本物?」
そして住本は手の甲にでかい傷跡がある韓国人のチンピラに報酬金を渡して去っていく。
「こき使いやがって・・・あのチョッパリが・・・」
公安そこまでやるのか!!!!!
もう登場人物の誰もが腹に一物抱えてて、誰も信用ならんという、嘘の上塗りを重ね続けてるのが今の日本社会、そして国際社会だというのが良くわかる。
重厚な社会派エンターテインメントで、日本映画界における『マルタの鷹』と言ってもいい重厚なフィルムノワールですね(^^)/
超お勧めです。