「邦画らしいテロ映画」外事警察 その男に騙されるな odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
邦画らしいテロ映画
2017年雑誌に「京大・原子炉実験所の准教授が拉致実行犯の娘と結婚、北朝鮮核開発協力疑惑浮上」というスクープ記事が載った。我々が知らないだけで原作者の麻生 幾さんは見抜いていたかのようなプロットには驚きだ。演出も悪くない、主人公は騙しのテクニックは相手の怒りを利用することと言う、怒りの演技は感情剥き出しでも白けるし難しいのだが真木よう子さんの抑えた演技は良い、田中泯さんは表情だけで語る凄さ。
2004年の警察法改正で警察庁警備局に「外事情報部」が新設され、国際テロリズム対策室が課に格上げされたほか、警視庁では公安部外事第一課の国際テロ担当が独立して外事第三課が設けられた。映画の外事4課は実在しない。外事は捜査までで制圧、確保などの実戦対応は特殊部隊(SAT)の出番だが国外での活動までは認められていないのでアジト急襲は韓国NISの独壇場となるのもリアルだが似たような外国映画を観すぎているせいか不謹慎ながら物足りない。
映画を観ていて最も怖いのは当節、核爆弾テロが絵空事ではないにも関わらず日本の組織は人員も少ないのに細分化され過ぎていて機能するのか疑わしいし、未だに拉致問題すら棚上げの政府では到底頼りにならないことが明白だからだろう。
テレビの刑事ドラマよりはスケールが大きいがやってることは大して変わらない。心理作戦に焦点を当てているようだが刑事がカツ丼やおふくろさんの話で落とすのと大同小異、筋金入りのテロリストは殺されても口を割らないと思う。
どうも日本人の作るテロ映画は情緒的過ぎて湿っぽい、しょっちゅう流れるチェロのBGMも狙い過ぎ。日本のテロ対策はこれでいいのかとの問題提起であればもう一歩踏み込んで欲しかった。