「まさに一級の芸術作品」最強のふたり odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
まさに一級の芸術作品
クリックして本文を読む
まさに一級の芸術作品に出会えたことが嬉しい。フランス映画界で化学反応が起きているのかは定かでないが何か動いた気がします。無声映画でモノトーンの「アーティスト」も素晴らしかったがあれほど極端にそぎ落とさずとも現代の映画づくりで太刀打ちできることを再確認させてくれた作品。
映画のエッセンス、展開、描写、背景、無駄な説明的セリフ、シーンなど微塵もない。それでいて心に響くものが伝わってくる。
映画の力とはこういうことを指すのだろう。スクリーンの中で進んでいくドラマと観る人の微妙な距離感、心理的関係を入りすぎず、離れすぎず、計算と感性で見事に創りあげている。
貧しい母親が窓拭きの仕事をしているところを車から見上げているシーン、母親との再会のシーンもセリフはない、重そうな荷物をさりっげなく持ってあげ、並んで歩いていくシーンだけですべてが伝わる。主人公同志の再会のシーンも庭のテラスの窓越しで撮る、エピローグもレストランの窓越しから文通相手との出会いをさりげなく見せる。劇中の絵画や音楽での対峙も価値観や人生観をセリフ以上に饒舌に表現してみせてくれる。冒頭の暴力的スピード、フォルテシモから始まり、また返ってくる、ソナタ形式のような構成もしびれる。
社会派のドラマであることに異論はないのだが、毎日流れてくる暗いニュースで見知っていることはなぞらない、経済的格差、身体的格差云々ではなく、人の本質的なものへの問いかけ、何かでくじけそうな人への暖かく慎み深いが力強いメッセージ、贈り物と受け取りました。ありがとうございました。
コメントする