劇場公開日 2012年9月1日

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「最強のコンビネーション」最強のふたり キューブさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5最強のコンビネーション

2012年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

楽しい

幸せ

 本国フランスで大ヒットを放ったという作品。予告編だけ見るとそんなにすごい作品にも見えない。だが見てしまったら最後、絶対に席から離れられない。
 何よりも主演の2人のコンビが最高だ。フィリップは程よい堅苦しさがあって、基本的には笑わない。だがこの彼の無表情さが時には笑いを、時には涙を誘う。それとは正反対にドリスの表情はコロコロ変わる。フィリップに障害があることをまるで忘れ、多くの失敗をする。それだけならまだしも、障害者をネタにした冗談をフィリップに向かって言い放って笑い転げるのだ。(日本だったら議論を呼ぶレベル。)だから彼の存在こそがこの映画の要と言っても過言ではない。しかしそんなドリスにも実は重いバックグラウンドがある。だから一筋縄ではいかず、根は良い奴だから、余計に重く感じられる。この2つの相反するものを見事に調和させているところがこの映画の優れた箇所だろう。
 彼らの周囲も愉快な人物ばかりだ。特筆すべきなのはフィリップの助手、イヴォンヌだろう。ドリスが入れ込むマガリと違い美人でも何でもないが、味付け程度の彼女に比べイヴォンヌはずっと映画に貢献している(現にセザール賞にノミネートされた)。
 惜しむべきは所々詰めが甘いことだろう。本来ならばもっと掘り下げるべきドリスの過去や、彼の家族など宙ぶらりんのままの伏線が多かった。この点をもう少し上手く描ければ、感動も大きかったかもしれない。もっともフィリップの問題は解決するのだが。
 しかしどんな人でもこの映画のことは嫌いになれない。オープニングのEW&Fの"September"で始まる軽快なドライブシーンから、静かなクラシックを奏でるシーン。これらの挿入曲の使い方は巧みだし、とても印象的だ。何も言わないのに感情をはっきりと読み取ることができる。
 できれば、というより絶対に見に行って欲しい。これほど満足できる映画もそう無いだろう。
(2012年8月10日)

キューブ