「詩的な美しさ」最強のふたり superMIKIsoさんの映画レビュー(感想・評価)
詩的な美しさ
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これだけ評価の高い傑作であるにも拘わらず長い間観て来ませんでした。
原因は本作のポスターです。白人の車椅子を笑顔で押す黒人のカット。あれを見てエディマーフィ調のブラックコメディと決めつけて見る気が伏せたのです。私、ハリウッドの黒人コメディアンの馬鹿騒ぎコメディが無茶苦茶苦手なのです。
でもたまたまWOWOWで放映していたので一念発起、一度観てみようと思いテレビの前に座りました。そして余りの素晴らしさに言葉を失った・・・。
本作については今でもコメディ映画と紹介されることが多いようですが、間違い無く本作はシリアスドラマです。
白人大富豪で身障者の主人公フィリップスは、富豪として尊敬と畏怖を持たれ、そして身障者として憐れられることに辛さを感じています。もう一人の主人公である黒人青年のドリスは、刑務所を出て失業中である上に、複雑な家庭環境に置かれています。この二人の境遇は充分シリアスで、コメディ要素などどこにもありません。また彼等を取り囲む登場人物も、皆何かの問題を抱えています。その設定が本作に深みを与えています。
そして主人公の二人が互いを補いながら、一歩ずつ前へ進もうとする姿は実に美しい。
物語の美しさだけでなく、本作の映像の美しさは特筆ものです。まさに詩的な美しさなのです。
また音楽が実に素晴らしい。派手な曲はなく、劇中で使われる挿入歌も効果的です。特にミニアムミュージック的なピアノだけのテーマ曲が印象的で、登場人物の心情を美しく表現しています。本作はエンドタイトルに流れるピアノの最後の一音までとても美しい。
本作を今まで避けていた自分を叱り倒したくなる位、素晴らしい名作でした。
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