劇場公開日 2012年11月23日

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「「カラスの親指」とは? なかなかに味のある話だ」カラスの親指 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「カラスの親指」とは? なかなかに味のある話だ

2012年12月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

興奮

実質、長編映画初監督の伊藤匡史監督に160分もの長尺を許した制作サイドに感心する。
なぜ、これほど長くなったのか。実は映画が完璧な結末で終わったかに見えたあと、さらに重大な事実が控えているのだ。そして、長さを感じさせない密度がある。

詐欺の手口はどれも笑ってしまうほど単純だ。けれども、実際そんなものかもしれない。単純なほど騙されやすいのだろう。欲とは哀しいものだ。
一見、真面目そうでひょうひょうとした感じのタケ(阿部寛)が人を騙す。そのタケに足手まといのように絡むテツ(村上ショージ)のコンビが楽しいが、なぜタケが詐欺師の道に入ったのか、それが徐々に明らかになっていく。これがストーリー上のキーになるのだが、同時に観る者を本質から遠ざける隠れ蓑にもなっている。
ひょんなことからタケの家に転がり込む姉妹と青年、とりわけ姉と青年の非常識さに呆れていると、どっぷり伊藤匡史監督の術中にハマり、さらに本質から遠のいてしまう。なかなかに手強い作りだ。
本当であれば、テツの言動に注意して観ていれば数々の伏線を発見できるはずだが、これも観終わってみればこそ言えることかもしれない。ここは黙って騙されたほうが、ラスト20分が楽しめるというものだ。あまり詮索しているとつまらなくなる。話の流れに身を任せた方がいい。

裏金融の取り立て屋のボスを引っ掛ける大芝居は結構面白く、ハラハラしながら観てしまう。仕掛けも現代風なアレンジでまずまずだ。

一件落着後に画面が暗転するが、この間のとり方が実に巧妙だ。終わったと思ってしまう。
間といえば、阿部寛が上手い。気がつくと話に乗せられていて心地いい。

テツが仙台の出だというのは無理がある。 村上ショージでは言葉のイントネーションがぜんぜん違う。ひょっとしてこれも嘘?

「カラスの親指」の話は興味深い。

マスター@だんだん