劇場公開日 1974年7月13日

「悪魔と神と人間と」エクソシスト 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5悪魔と神と人間と

2024年3月11日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、DVD/BD、VOD

悲しい

怖い

興奮

少女に悪魔が取り憑いた…!
ショッキングな内容で大ヒットを記録し、世界中にオカルト・ブームを巻き起こした名作ホラー。1973年の作品。
今でこそホラー映画の一つのジャンルである“エクソシスト”だが、その先駆。
“エクソシスト”という言葉や存在を定着させのも。
また、それまでB級の類いだったホラーをA級ジャンルに。
あらゆる意味でホラー映画の記念碑。金字塔。

シリーズ新章『~信じる者』を見るに当たって久し振りの鑑賞。
改めて見て思ったのは、静かなタッチ。
特に序盤~中盤は怖さはほとんど皆無の人間ドラマベース。
女優でシングルマザーのクリスと娘のリーガン。
母親を亡くし信仰心が揺らぐ神父のデミアン。
二組のドラマが交錯して展開。
静かな展開ながらも、暗示めいた描写や不穏な雰囲気が…。
冒頭、イラクの古代遺跡で悪魔パズズの石像と対峙するメリン神父。
後にメリンと悪魔祓いに挑むデミアン。信仰心揺らぐ彼は悪魔に立ち向かえるのか…?
クリスとリーガンの平穏な日常に忍び寄る…。天井の物音に始まり、ベッドが大きく揺れる。
遂にリーガンに…。
大人しかったリーガンの口から発せられる神を冒涜する言葉や卑猥な言葉。十字架で自傷行為や緑色の汚物を吐く。首が180度回転…!
それでも医者たちは精神的な病と少女の身体には痛ましい検査を繰り返すが、常識の範囲を超えているのは明らか。
原因不明。藁にも縋る思いで、ある儀式を。
クリスも当初は半信半疑。デミアンも拒んでいたが、初めて対した時確信する。
“悪魔”の存在を…。

エレン・バースティンの母親の苦悩。
ジェイソン・ミラーの複雑な内面。
マックス・フォン・シドーの重厚な存在感。
そして、リンダ・ブレア。ディック・スミスによるおぞましい特殊メイクとマーセデス・マッケンブリッジのドスの効いた声、勿論本人の怪演もあって、戦慄するほど…。おそらく世界中のほとんどが初めて目撃した“悪魔憑依”。
その皆の熱演は、ホラー映画でありながらバースティン、ミラー、ブレアがオスカーノミネートという形に。
その一方、ミラーの不幸やマッケンブリッジと製作側の遺恨の“曰く付き”も有名。

ウィリアム・フリードキンのリアリズムある演出もあってこそ。
終盤の一番の見せ場の悪魔祓いシーン。
汚物吐き、揺れるベッド、空中浮遊など一見チープに思える現象も巧みな撮影技術や音響効果などでインパクト強く畳み掛ける。
ベッドの上で奇行と奇声を発すリーガン(悪魔)の身体に光が差し、パズズ像が浮かび上がるシーンは荘厳ですらあった。

見世物的な安っぽさ全くナシ。厳粛なる神と悪魔の闘い。
決着は…? あの“犠牲”が出来るのは、この地上に於いてちっぽけながら“人間”という存在のみ。
悪魔の存在、神の存在、そして人間の存在を問う。

近大