「オカルト映画のジャンルを確立した大きな意義のある名作」エクソシスト あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
オカルト映画のジャンルを確立した大きな意義のある名作
ホラー映画の中の一ジャンルとして、
オカルト映画は本作を持って誕生した
本作があったからこそ、オーメン始め数々のオカルト映画が作られたのだ
原作は1970年の大ベストセラー小説
恐らくマンソンファミリー事件がそのヒットの引き金になったのだろう
その前年、「ローズマリーの赤ちゃん」というオカルトものの走りといえる映画を撮ったロマン・ポランスキー監督の妊娠中の妻で女優のシャロン・テートなど数人がオカルト教団によって殺害された事件がそれだ
この事件でオカルトは身近な恐怖となった
教祖のマンソンはその後逮捕され、本作公開の前年の1972年に死刑を宣告されている
そこに本作が公開のなのだから大当たりしたのは当然だったろう
おりからのオイルショックも科学文明の行き止まりを予感させるものだった
本作はそんな時流に乗っただけでなく映画自体も良く出来ており、クライマックスの壮絶な悪魔払いのシーンはいまだに語り草だ
クライマックスに至るまでに徐々に不安感を高めていくために監督は様々な演出を施している
例えば地下鉄な階段から上がってくる牧師の母の映像にサブリミナルで悪魔の顔を挿入したりしている
それらの中でも特にカメラによる演出の技法に改めて舌を巻いた
撮影の凄さは特筆したい
カメラはオーウェン・ロイズマン
ウィリアム・フリードキン監督とはフレンチコネクションに続いてタッグを組んでいる
レンズが要所要所で微かに広角レンズを使っていたのだ
これによって室内で奥行きと共に妙な歪みが画面に生まれ不安感を醸し出している
そしてクライマックスでは、恐らく巨大冷蔵庫内にセットを組んで撮影したのではないだろうか
登場人物すべての吐く息が白いのだ
クライマックスの夜の屋外シーンではスモークをたき室内な異常な空間が周囲にまで溢れでて来ている様を表現してみせている
確かに驚かせるシーンや、グロテスクなシーンもありそこに目も行ってしまうのだが、このように少しずつ不安の水位を上げて最後には観るものを恐怖で溺れさせるように見事に構成されているのだ
本作のテーマ曲は誰でも知っている超有名曲
ワンフレーズだけで判る印象的なものだ
もともとはマイク・オールドフィールドの手になるチュブラーベルズというアルバムのもの
これを本作では編集して極短く使用している
大変に印象的で、中盤とエンドロールで使われる
中盤では微かに短くかかりいよいよクライマックスに突入していくとのファンファーレになっている
エンドロールでは恐ろしい結末をより一層鮮明に記憶に焼き付ける力をみせる
短い編集で使われた理由は何か?
それは何しろこのアルバムのA面、B面で各一曲づつしかないからなのだ
それもこのチュブラーベルズのバート1とバート2の2曲しかない
つまり約49分で実質一曲のみだったからだ
しかしそれでもこのアルバムは大ヒットしたのだ
当時はプログレッシブロックというジャンルが流行しておりこのような長い曲はそう珍しいものではなかった
つまりそれほどのパワーのある名曲のエッセンスを使ったという訳だ
だからあれほどの強力な破壊力を持つのだ
この音楽で本作はニ倍増し以上の力を得たと思う
彼のこのアルバムはあのリチャード・ブランソンの新興レーベルヴァージンの最初のレコード
このアルバムの大ヒットが無ければ、ヴァージンレコードの今日も、飛行機会社も無かった
本作はオカルト映画のジャンルを確立したという大きな意義のある名作だ