「本当のお父さんですよ」エクソシスト ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
本当のお父さんですよ
十数年ぶりにCSで観て、昨年の「ヘレディタリー/継承」は思いのほかこの作品に通じるものが大きかったんだなあ、と思い知らされた。
ほとんど悪魔祓い場面しか記憶になかったが、今観るとドラマ部分も充分面白い。
リンダ・ブレア演じる少女メーガンの、父のいない寂しさに悪魔がつけ込んで来た、という家族ものとしてもちゃんと描けているし(偉そうにすみません)、カラス神父側の事情もうまく見せているので、両者が合流した場面では、ただ話しているだけなのに超アガるという。
まるで運命の相手と出会った恋人同士みたいに、それまでと芝居のトーンが全然違う。
母娘がついに本当に求めていた人に巡り合ったんですよ、ってことなんだろうな。
そしていざクライマックス、霧の立ち込める館の前に神父が到着してからのワクワク感は異常。
最近では「来る」や「貞子vs伽倻子」もあったように、霊能力対決というだけでテンションが上がる。無駄に丁寧な準備のくだりとか、さすが心得ていらっしゃる。
昔の映画って今の映画みたいにクライマックスが長くない。せいぜい30分とか。そのぶん、そこへ至るドラマをじわじわ盛り上げて、クライマックスへ至り、最後はスパッと切れ味鮮やかに終わるので、後々まで印象に残るのかなあ。
今の娯楽作品はストーリーが複雑化しすぎて要約できないものも多い。それはそれで仕方のないことなんですけど。
「サスペリア」よりむしろこっちの方が「決して1人では観ないで下さい」の惹句に相応しい薄気味悪さ、不吉さを漂わせている。
「サスペリア」はスタイリッシュでホラーというより怪奇もの。もちろん、少女マンガ好きとしてはそれはそれで好きなんだけど、ガチな怖さで言ったら断然こっちだと思う。
特殊メイクも全然チープに見えなくてすごい。
モラトリアムに苦しみ続けたカラス神父はとうとう本物の「ファーザー」になれたのだ。