「人を兵器にするという事」基礎訓練 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
人を兵器にするという事
F.ワイズマン特集 - その4
時はまだベトナム戦争真っ只中。ケンタッキー州のフォートノックスの基地で、一般志願兵を只の若造から兵隊に仕上げるまでの9週間にわたる訓練を記録したドキュメンタリーです。
入所式より前に、まず整列させられて”Yes, Sergent"(はい、軍曹)の掛け声を叩きこまれ、「訓練のコツは命令に従う事」と告げられます。服従の構図がここから始まるのです。それから、正しい歯磨き法の生活面から、銃の撃ち方・格闘法・有刺鉄線のくぐり方・地雷の扱い・野戦のドリルなど、実際の戦場に向けた訓練が続くのですが、一番印象に残ったのは思想面での講義でした。
戦争はつまるところ「人殺し」なのですから、そこに疑問を抱く若者も想定されます。しかし、講義では「人を殺してよいか議論する権利は誰にもない」と疑問に蓋をした上で「敵とはお前を殺しに来る者だ」と恐怖を植え付けるのです。つまり、躊躇なく銃の引き金を引ける戦場マシン化が進むのでした。それは恐ろしい人間改造ではありますが、現実に戦場に放り込まれたら、それこそが生き残る為のノウハウなのでしょう。
そう、その「現実に」が戦争を語る時の曲者なのです。戦場の現実・国際政治の現実・社会の現実・人間の現実、その押し付けのどこかで我々は戦争に抗する或いは回避する知恵を働かせねばならないのです。
この映画に映っていた青年たちのどれほどが戦場から帰って来る事ができたのでしょう。
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