チチカット・フォーリーズのレビュー・感想・評価
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『カッコーの巣の上で』とかぶる恐ろしさ
フレデリック・ワイズマンの長編デビュー作となる約60年前のドキュメンタリーで、精神治療が必要と認められた犯罪者の為の州立刑務所マサチューセッツ矯正院にカメラを持ち込んだ記録です。 ワイズマンはデビュー作から、劇伴音楽なし・ナレーションなし・説明字幕なしの今に通じるスタイルが既に確立しています。はじめは、一体どこが舞台なのかも分からず、11歳の少女のみならず自分の娘にも性的暴行をはたらいた男の自供場面にただただゾゾッとします。しかしやがて、この「矯正院」なる施設の内情が分かって来ると別の意味の恐ろしさがこみ上げて来るのです。 殆ど裸にされて房内をぶつぶつ呟きながらひたすら歩き回る男は、最近映画で観た袴田巌さんの「拘禁症状」とそっくりに見えます。精神医療の事など分からない僕ですが、「この男性は本当に病んでいるのか? ここに居るからこうなってしまったのではないか?」と思えて来ます。 また、「自分は正常だ。普通の刑務所に戻せ」と切々と訴える男がいます。その言葉の一つ一つは至極真っ当に響きます。「ここに居てもよくなる筈はない。薬が僕をますます悪くするんだ」の主張も尤もだと思えるのですが、この主張を聞いた医師たちは「完全に偏執狂ですね。もっと薬を処方して」と診断するのです。これって『カッコーの巣の上で』とそのまま被さって映ります。彼は本当に精神疾病を負っているのでしょうか。 映画はあからさまには何も主張する事なく終わります。あの人たちはその後一体どうなったのでしょう。
構成美
構成美に唸らされる 生と死を映そうという気概を感じた 本当に編集が憎いくらい良いのよ 一歩間違えれば本当に見世物になりそうなところを、 観客を罰してるじゃないけど、こちらも見られているような瞬間があるのよね 彼らの背景を思ってずっとこみ上げるものがあった もう酷いよね本当、よく撮ったよ しかも画も映画的でうつくしくて、 なによりも人がうつくしく見えたのがよかった チューブで栄養を入れる隙間に、 死人が棺桶に入るとか、 薬物療法が平気で提案されたりとか 本当に60年代ってこうだったんだ…と驚いた 彼らに必要なのは拷問でも拘束でもなくて 適切な治療だよ もうワイズマンの作品がぜんぶ観たくなった 裏側を静観するその目を通してすべてを観たい
show must go on.
二度目の鑑賞。疲労の為少し寝てしまいましたが…。 1960年代、アメリカの精神病院の一つを対象とした作品なのだが。 隔絶された空間での事象、異国の話、50年前の歴史・過去、とだけ割り切ることが出来るだろうか。 マジョリティによるマイノリティの排除、ある場所・ある時代には常識とされ許容されていたものの非絶対性。 今自分を取り巻いている環境において、常識や己の立ち居振る舞いを、今一度考えさせられた。
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