劇場公開日 2012年5月12日

  • 予告編を見る

「抱腹絶倒、ハイレベルなエンタメアクションに驚愕」ロボット いおりさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0抱腹絶倒、ハイレベルなエンタメアクションに驚愕

2012年5月9日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

単純

興奮

一か月ほど前

youtubeで観た動画に唖然とさせられた
キャラの濃そうなオッサンが、武装した警察相手に大暴れ
そのデタラメな破壊力は圧巻で、今まで観たことがなく
思わず「凄え!」と声を上げた
それが本作「ロボット」のトレイラーだった
これは絶対に観たいと思わせる、麻薬的魅力を嗅ぎとった

「ターミネーター」より強く「トランスフォーマー」より人間臭く
「ATOM」よりオッサンで「リアル・スティール」より感情豊か

そして待ち望んだ本篇も、事前の高い期待を裏切らない
ここまでの刺激は、なかなか出会えない
話題に上っていないが、エンタメ性はここ数年で随一だ

バシーガラン博士は、美人の恋人サナを放置し
ロボットの開発に没頭、自身に似た風貌のロボット、チッティを作る
完成度を高めていく中で、チッティに感情を施すバシー
その結果、サナに恋してしまうチッティが安定を壊す
チッティとバシー、サナの運命やいかに というお話

お話はシンプルも、テンポ良く見飽きることはない
基本的に、リアルな話にコミカルを織り込むが
ちょっとした皮肉が、いいアクセントになる

人間に危害を加えてはならない
命令に服従しなければならない
自己を守らなければならない

アシモフのロボット三原則を否定したのも面白い
ロボットの人間化は、人間そのものを見つめ直すことに繋がる
感情持たない危うさ、軍事転用、他人を追い落とすこと
これらは業深き人間への皮肉に他ならない

ただ雰囲気はコミカルで、決して堅苦しくならない

主演は「ムトゥ踊るマハラジャ」ラジニカーント
クレジットに“スーパースター”と冠されたカリスマに笑った
彼の映画を観るのは「ムトゥ…」以来

また目を引くヒロインは アイシュワリヤー・ラーイ
ミスワールドで、華やかな美貌に溜息漏らした
「マイネームイズハーン」のカージョル
「スラムドッグ」のフリーダ・ピントといい、最近インド美人が熱い

また言葉も面白く
英語かと思えば、判らない言葉=タミル語が入り混じり
独特の雰囲気を醸し出している

またロボット、チッティのビジュアルも印象的
ダークサイドに堕ちたチッティは、一代前の北の国の独裁者にも見え
ゴルゴ13にも見え、ついには松方弘樹にしか見えなくなった
しかも、一皮剥けば浪越徳次郎似の緊迫感ない面白フェイス
エンタメを意識した作り込みがいい

だが、やはり一番の見所はアクション
序盤の列車での多人数掛けでハートを鷲掴みし
段階的にスケールアップする予測不能なアクションは
豊富なアイディアの元に、次から次へと畳みかける

その描写に抜かりはなく
アリエナイ展開を、理屈抜きで見とれさせる
途中描かれる“蚊”との戦いも独特で嫌いじゃない

行動に対するテクノロジーの無駄遣いも相まって
最高に贅沢なお遊びが、これでもか!としつこく押し寄せる
最後まで、妥協のないテンションが維持される

この面白さ、言葉では伝えきれない

しかしなにが凄いって、この映画を作ったことだ
ヤラれた感がとにかくデカい

「ターミネーター」を凌駕するアビリティを持ちながら
力を駆使する理由は、自身の恋愛のため
決して世界征服や、類全滅など仰々しくしない
高すぎる能力に見合わない目的が、実にユニークだ

日本だったら、きっとこのネタに多額の製作費は掛けられない
もっと低予算で、ほどほどの作りになるだろう
ハリウッドだったら、逆にこのテンションでは作らせて貰えない
もっと壮大で、シリアスな世界観を求められそうだ

潤沢な資金なのに、制約の少ない自由な発想の具現化
マイケル・ベイが羨む声が聞こえてきそうだ

終始コミカルに引っ張るも、ラストは名作ロボット映画を思わせ
しんみりとさせてくれる
笑いから人情まで盛り込み、余すことなく駆け抜ける
最後までテンポよく、139分という長さはあまり感じない

蛇足だが完全版は3時間弱
日本版はボリウッド映画特有のダンスシーンがカットされたそうだ

これぞエンタテイメントの極み
「スラムドッグミリオネア」に「マイネームイズハーン」と
シリアスなボリウッド映画に、すっかり魅せられていたが
アクション&コミカルな作品まで登場とは、全くもって恐れ入る

間違いなく、オレの映画史に刻まれる一作
とにかく笑いたい、派手なアクションを観たい
老若男女問わず、そんな人に勧めたい
たった1800円の最高にコストパフォーマンスのいいアトラクションだ

いおり