「月へ飛べないロケットだから」アイアンマン3 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
月へ飛べないロケットだから
アメコミ映画のなかでも屈指の人気キャラ
『アイアンマン』完結編が満を持しての公開!
監督交代で文句を言われている方もいるが、
個人的には『2』があまり好きじゃなかったので、
あまりそこにはこだわらずに鑑賞した。
しかし監督交代の割には雰囲気は変わっていない。
妙に深刻そうな予告編に反してやっぱユーモア満載。
どんなピンチも高い知能とボヤキで乗り切る
スターク節は健在! 内輪ネタも少なくて良いね。
スーパーで材料調達して即席兵器を作るシーンも、
1作目を彷彿とさせて特に面白かった。
とはいえ全体的に、アクションの規模としては
これまでよりやや小さい印象。
基本的にトニーが生身での戦いを強いられる展開
なのでスーツの出番も思いの外少ない。
だが、細かい見せ場の散らせ方がうまいのか、
中弛みは殆ど感じなかったし、何よりトニーと
他の登場人物たちのユーモラスなやりとりが楽しい。
(基本このシリーズはキャラ重視という気がする)
満を持してのクライマックスは今まで出し惜しみして
ゴメンナサイと言わんばかりに、
色んなタイプのアイアンマンがわらわら登場!
ずいぶんスーツがもろい気もするが(笑)、
次々スーツを乗り換えながらの戦闘シーンは熱い!
まあ不満としては、以下2点。
・ペッパーさん強すぎ(せめて最後の一撃くらい……)、
・敵の動機弱すぎ(置いてきぼり喰らった恨み
というのは最後の敵としてはちと情けない……)
単なる傀儡(かいらい)だったマンダリンについては……
話は面白くなったし、“利益の為に架空の敵を仕立てる”
という点に皮肉が見え隠れしている気もするし、
個人的には○。
ベン・キングスレーも楽しそうだったし(笑)。
最後はスーツをすべて処分し、
胸のリアクターも取り去ったトニーの独白で締める。
他のレビュアーさんも書かれてるが、
アイアンマンとは超高性能の戦闘スーツではなくて、
あくまでそれを着こなす人間、逆境やプレッシャーを
己の力で乗り越える主人公の事だと、
今回は言いたかったんだろうね。
新型スーツの大暴れを期待していただけに
物足りない気持ちは残るが、そういう事であれば、
完結編として納得のゆく出来だったと思う。
思えば『1』で殺人兵器は造らないと心に決めておきながら、
あの超絶兵器を長い間保有しているというジレンマを
抱えていた天才トニー・スターク。
このシリーズは基本ユーモア満載の娯楽アクションではあるけど、
『どんなに高尚な目的で造られたテクノロジーも、
使う側の意思によっていくらでも危険なものに成り得る』
という面も一貫して描いてきている。
大いなる力には大いなる責任が伴うのだよ。
あ、ゴメン、これ違うヒーローもののセリフだわ。
軍事ロケット開発で知られる科学者、
フォン・ブラウンの言葉の引用が印象に残っている。
月へ飛ばせてもらえなかったロケットの話。
自分の創造を証明する為なら、それがどんな手段に
利用されようと構わないという、科学者の悲しい性(さが)。
『ゴジラ』の芹沢博士よろしく、
自分が正しいと信じて創造したものを捨て去るのは 、
トニーのような男にとって物凄い勇気が要る事だと思う。
このシリーズはひとりの科学者が、自分の創造した力を
捨て去る勇気を得るまでの物語だったとも見れるのかも。
だからバナー博士、同じ科学者なんだから
ちゃんと話聞いてあげなさいよ(笑)
〈2013.5.5観賞〉