「前作より格段に面白い」アイアンマン3 Splatboiさんの映画レビュー(感想・評価)
前作より格段に面白い
アイアンマン2ではロッド系の武器を備えた敵が登場し、アイディアそのものは良かったものの、戦闘開始後ものの一分程度で倒されてしまい、その呆気なさに何となく不完全燃焼な気分が残った。アイヴァン(イワン)・ヴァンコが天才的な物理学者という設定からも、F1サーキットに突如乱入しては確保されてしまうというあまりの計画性の無さから何となく期待外れな感じは否めない。前作では寧ろアヴェンジャーズへの序章としてのフォーカスが強かったと言える。
本作はどうかというと、悪役は間違いなく強敵である。マーヴェルのコミックに置いてもマンダリンはアヴェンジャーズそのものを一人で相手できるほど、とされているだけあって一度爆破されても生き残る、という渋とさも見せ付けられた。今までのアイアンマンシリーズと何が違うかと言えば、この悪役がメカや機械的なテクノロジーで生まれたものでなく、生物兵器のようなものである、という点だろう。口から火を噴くシーンはさすがに現実味を失い過ぎである気がしないでも無かったが、原作のマンダリンは超人的な魔法使いのような存在であった為、マンダリンを抜擢するならばこの程度の描写は必要であるとも考えられる。なので、多少SFよりもファンタジー要素が取り入れられているものの、気になる程ではなかった。
ただ、これまでのシリーズ同様変身シーンやアイアンマンスーツのメカっぽさは十分に楽しめる。腕に埋め込んだセンサーに反応してスーツを部分毎に装着したり、遠隔操作装置を開発したりと新しいギアも多々登場している。殊に最後の大乱闘シーンでのスーツの脱着を駆使した華麗な戦いようにはこれまでのシリーズには無いロマンを感じる。とは言え、ピンチに陥るのは毎度の事で、もうダメかと思わせる箇所が幾つかありきっと何とかなる事は解っていてもハラハラするのは必至だろう。スーツが40機以上自動操縦で登場したのには、さすがにスーパーコンピューター何台をもってして制御しているのだろうかと思ってみたものの、あまり突っ込まない事にした。これらのスーツのデザインも多様多種でそのアイディアに好意を覚えるか否かは微妙な所と言える。個人的には初期のデザインから徐々にパワーアップするのは構わないが、腕がクレーンのようになっていたり、ガンダムのゴッグのようなまるっきり違うスーツが出てきたのはやり過ぎのような気がした。やはり「アイアンマン」と言われれば赤と金のあのスーツを連想する為、何となく大幅な変更を模した物は受け付けなかった。
また、トニーのキャラも相変わらず楽しめる。吹き替えや字幕で観ておらず、彼の皮肉の混じったジョークがどう訳されているのか解らないので微妙な所だが、英語が解れば劇場が沸くくらいの面白いシーンがちょくちょくある。ただ、初期の彼の傲慢さは幾らか和らいだ感はあり、その点ではトニーの人としての成長を描きたかったのかも知れない。同時にこれまではなかったトニー自身がスーツ未着用状態でのアクションシーンも多い。彼が拳銃を持ってスパイのような事をしているのは何か新鮮味があった。更にヒロインのペパーが敵の手に落ちて肉体改造を施されてしまうというのも異例だ。最後の彼女の一瞬のアクションには正直失笑しつつも驚いた。彼女自身も直後びっくりしていたようである。
以上のように本作ではこれまでとはストーリー上大きく異なる要素やアイディアが取り入れられているものの、アイアンマンの持つ楽しさやエンターテインメント性は損なっていないと思った。ただ、上記の大きな変異のあるストーリーや設定に好感を覚えるか否かは十人十色で難しいと言えるし、何を期待しているのかに因るだろう。単純にこれまでのようなアクションや、新しいアイアンマンを観たい!という動機ならば、トニーの新ガジェット発表会を観に行くような気持ちで気軽に行って損はないだろう。家族連れでも、友達とでも一人でも楽しめる作品だと思う。