「こんなに評価が良いとは思わなかった ※本筋に関わるネタバレはなし」シュガー・ラッシュ alalaさんの映画レビュー(感想・評価)
こんなに評価が良いとは思わなかった ※本筋に関わるネタバレはなし
ディズニーが作ったからこの評価、というのもあるかなと個人的には思います。途中までどんなに取っ散らかってても、最後に何か良い感じに話を纏めるのは上手なんだよな、ディズニー作品って…
あらすじ:
嫌われ者で孤独な悪役を演じるのに嫌気が差し、ヒーローが手にするようなメダルがあれば自分も人気者になれると考えたラルフは、ガンシューティング「ヒーローズデューティ」でメダルを貰えると聞き、力ずくでメダルを持ち帰ろうとする。しかし敵キャラの虫を体につけたまま宇宙船に乗ってしまい、レースゲーム「シュガー・ラッシュ」に墜落、ゲーム内に虫を放ってしまう。それに気付かないままエラー持ちの嫌われ者ヴァネロペと出逢い、絆を深めていくが…
物語の中で、色々起きてはいます。起伏も一応あります。が…どうも主人公が自分勝手で入り込めませんでした。メインの主人公はラルフなのでしょうが、ヴァネロペと併せてダブル主人公と言っても良いかと思います。が、なんと両者とも自己中。
自分のことしか考えず、ラルフは「メダル欲しいメダル欲しい」ヴァネロペは「レースに出たいレースに出たい」と両者ずっとそればかり。ラルフは人気者になりたいがためにメダルメダル言ってて、ヴァネロペはそもそもレーサーとして作られたキャラだから、とにかくレースに出たくて仕方ない。そのためには他人の迷惑なんて考えない。
一応、2人に共感(?)できるように、その自分勝手な振る舞いの理由もきちんと説明されるんですが、それにしても…どこまでいっても自分自分のストーリーで、ラストに漸くラルフが善に目覚め、取って付けたようなヒーローショーに。
ヴァネロペに至っては最後まで反省しないというか、悪いことしても謝りません。子供向けなのに良いのか、あれで。
ヴァネロペはゲーム自体を破壊するかもしれないエラー持ちだから、もし性格が良くても嫌がられてたのかなーと思いますが、ラルフは単に、自分勝手ですぐキレて暴力を振るうから嫌われてるだけでは?としか思えませんでした。だって(呼ばないのも失礼とはいえ)お祝いの席に突然やってきて、「俺が!俺が!」とキレて手作りケーキぶっ潰すようなクズ嫌だろ…
序盤で「俺は悪役やってるけど本当は悪い奴じゃない」みたいなこと言ってたけど、いやお前割とクズだよ?
続編と知らずに『シュガー・ラッシュ オンライン』を先に見てしまったので、ヴァネロペのクソガキ具合もラルフのアホ具合も知ってたつもりでしたが、1作目はここまで自己中だったのか…と唖然としました。
正直、本作を見ずに続編を見ても何ら支障はありません。本作でラルフとヴァネロペが出逢って、何やかんやあってお互い唯一の理解者になりましたってことだけわかってれば充分です。
終わり方も何か物悲しいし、脇役の蛇足(に見える)恋物語といい、続編ありきの終わり方という感じがしました。
あと字幕で見たんですが、凄く気になったのがヴァネロペの声!!何であんなガッサガサの枯れ果てた声の人選んだの!?というくらいのガラガラ声で、最後までそれがずっと気になって気になって。逆によく見付けてきたなと。どう考えても子供の声じゃない。
調べたら、声優じゃないみたいですね。コメディアンで俳優もやってるみたいですが、演技云々よりまず声がガラガラ過ぎて気になって、そればかり気にしてしまい字幕を見逃すわガラガラで聞き取りづらいわで巻き戻す…を何度かやりました。そのくらいガラガラ。英語版だとヴァネロペがとにかく全然可愛くないので(性格は仕方ないとして)、日本語版で見た方が良いかもしれません。字幕派ですが、今回は字幕で見て凄く後悔しました。
ストーリーやキャラクターに全然のめり込めなかったので、それ以外の魅力というと、日本のゲームのキャラクターがチラッと出てくることと、音楽、映像の明るさや疾走感でしょうか。
ストリートファイター、マリオ、ソニックのキャラが出てきましたが、喋らせてはいけない契約でもあるのか、それとも声優集めるのが大変なのか、喋ってるシーンはほぼなし。
音楽は本当に良くて、ディズニー関連は大抵どれも良曲ですが、本作は群を抜いてセンスが良かったと思います。
アベンジャーズやプリンセス系のような壮大な音楽やクラシック系ではなく、現代のポップミュージックを使っていますが、どれもカラフルでポップな背景やレースのスピード感と合っていて、目と耳が忙しい。笑
「ただのBGM」ではなく映像と完璧にマッチしていて「おっ」と思わせてくれます。
EDで、洋楽に興味のない家族が「これ誰の曲?」と聴いてくるくらいなので、ぜひ音楽は楽しみに。
映像は、序盤はそうでもないですが、「シュガーラッシュ」のゲーム内に入った後はとても明るくポップで、カーレースの疾走感も気持ち良く、子供も充分楽しめると思います…が、やはりキャラクターが自分勝手すぎるのが難点かな。子供に見せるのは躊躇します。
キャラクター設定的には続編の『シュガー・ラッシュ オンライン』がお勧めですが、ポップで可愛らしい映像は本作の方が堪能できますし、続編はインターネットの世界の話になるため、少し年齢層が上がりそうです。インターネットの基礎知識があり、YoutubeやSNSを日常的に使っているくらいの年齢でないと、理解できないかも。「いいね」欲しさに動画をアップしまくって…など、時代に合った問題も起きるため、本格的に教える前段階として、教育的な意味でも良いかもしれません。
音楽性の高さはそのままに、キャラクターも割とまともな性格になっており、友達同士で高め合うことや、友情の大切さを感じさせてくれます。
本作は色々事件が起きてはいるし、ラルフとヴァネロペがどう分かり合ったのかもきちんと描かれてはいるんですが、どうも話があっちこっちするわ、全部主人公が引き起こしたことだわ、その割にワタワタ尻拭いしてるのは脇役たちだわで、始終何かなーと思ってたら終わってしまいました。最後は綺麗に纏まってるんですけどね…
続編は「ネット世界をよく表現したな」と感心する反面、ちょっと冗長な部分もあったので、疾走感でいうなら断然本作の方が楽しめたんですが。
そういうわけで、キャラクターの性格を置いておくなら本作も良作と言って良いと思います。続編とセットで見ることをお勧めしたいのですが、本作と続編とは年齢層が微妙にズレている気がするのは何故なんだろうなあ…
個人的には、楽しめはしたけどもう一度観たいとは特に思わない作品でした。地上波でやってたら見るかも。