「009の本質とは?」009 RE:CYBORG レヲンさんの映画レビュー(感想・評価)
009の本質とは?
009の本質とは何なのか?
009のイメージは十人十色なのかもしれない。
人によってはブラックゴースト編や地下帝国ヨミ編の、「勧善懲悪、戦闘冒険活劇」であるだろうし、人によっては神に意思や人間の悪意に対峙し苦悩する島村ジョーをリーダーとする00ナンバーサイボーグ達の悲壮なる覚悟であろう。
私にとっての009のイメージは、白黒アニメで見た両目が見えた白い戦闘服の島村ジョーであり、ブラックゴーストとの戦いの末に流れ星になったジョーとジェットであり、そしてしつこく抜けない魚の小骨のように、私の人生に深く深く刺さったまま抜けずにいる、1969に未完のままに中断した「天使編」なのである。
「天使編」に出会っていなかったなら、私の人生はどれほど単純明快になっていただろうかと、時々夢想せずにはいられない。ことによると、自分は「天使編」の完結した姿を見たくて、醜態を晒して生きながらえているのではないかと思えるほどだ。
さて、009 RE:CYBORGである。
私はすっかり勘違いをしていた。この作品は神山健治監督による「天使編」の解釈と、009シリーズの完結を目指したものであろうと。
009 RE:CYBORGは神山監督による「009という物語の解釈」であり、現代風リメイクである。
ストーリーの軸に持ってきたのは、神の意思(気まぐれ)による人類のやり直しに対して、神に対抗することはできないまでも、直面した人類の危機に対して、滅私の精神で自分にできる対処をしようという正義のヒーロー島村ジョーの活躍であった。
そういった作り方をしたのならそういった見方をするのが、受け手としての礼儀であり、楽しみ方である。
本作の「神vs00ナンバー」という構図は的確に009の本質を捉えているし、2時間という枠の中で見事にストーリーも完結し、テーマも消化している。
予想を上回るストーリーの飛躍は無いものの、手堅く要所を押さえてまとめており、大作のリメイクとしては見事な仕事っぷりである。あたかも、名画の修復作業のように・・・
ただ、純粋なエンタテインメントとして見て面白いか面白くないかというと、実に面白くないんだな。これが。
CG凄い、映像表現凄い、009、004、005かっこいい。それ以上に、何が残るだろう?
アクションを期待して見に行った層には難しすぎるテーマだろうし、天使編や神々との戦いを何十年も考察してきたコアな009ファンにとっては、神山監督の解釈ではあっても新たな発見がない以上は、この先何年も知的レスリングを挑む対象にするには「浅い」のである。
映像的には大胆に冒険していたものの、ストーリー的に、もっともっと大胆に冒険しても許されたと思うし、神山監督であればそれが可能だったはず。
ありがちな原作原理主義者の重箱の隅的粗捜し的間違い探しはバカバカしいのでしない。
ストレートな「天使編完結」を期待したのは私の都合であり、当代きっての神山健治監督による現代風009リメイクは、それはそれで長年009を愛してきた私にとっては、望外のご褒美だったのである。
まぁ、なんだかんだ言って、この重いテーマを1作で完結させてるってのは、大した才能だよ。