「殺られる前に殺れ」ドライヴ キューブさんの映画レビュー(感想・評価)
殺られる前に殺れ
いきなり今年度最高の作品に出会ってしまったかもしれない。無駄なカーチェイスを省いた強盗シーンのオープニングでいきなり映画に引き込まれる。後部座席に座り、警察にびくびくする強盗2人組を尻目に無表情でハンドルを握る「ドライバー」。理解しがたいほど強烈で魅力的なアンチヒーローだ。
まず、その「ドライバー」役のライアン・ゴズリングが最高の演技を見せてくれる。「ブルーバレンタイン」、「スーパー・チューズデー」と彼の主演作を見てきたが、どれもこれも全く違う人物なのに忘れがたい。抑えきれない感情を表にさらけ出すディーン、希望を抱えていたのにある事件がきっかけで豹変していくスティーヴ。そして内なる情熱、怒りを押さえ込み無表情に金槌を振りかざす「ドライバー」。彼は本当にすごい俳優だ。若手の中でもずば抜けている。アイリーンと視線を交わしあい、少しだけほほえむ。その優しさにあふれるシーンがあるから凶行に及ぶ時の残酷さが際立つ。
小規模のコミュニティで起こる事件だからこそ、恐怖やスリルが観客にとって身近になる。鮮烈なバイオレンスシーンがやはり映画の肝となっているのだ。むしろ映画はそこからグッと面白くなる。エンディングに近づくにつれ「ドライバー」の運命を案じるようになる。あふれ出す愛情と狂気が見事に混ざり合い、最高にスタイリッシュな作品が完成した。
こんな映画めったに見られない。まだ見ていない人はいますぐ映画館へ足を運んで欲しい。
(2012年4月15日鑑賞)
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