「バランスの綱引き。」ドライヴ ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)
バランスの綱引き。
ライアン・ゴズリングが抜群に格好いい!もうこの映画、それに尽きるんじゃないでしょうか。
寡黙な主人公(ゴズリング)は、裏稼業にも手を染める、多方面に秀でた“ドライバー”。
多くを語らぬ、感情を表に出さぬ、独白もなし。
淡々とした無駄のない所作。
覇気がない訳じゃないし、人との干渉を嫌う訳でもない。ただ、独特、個性的、無口。
この男は一体何を思うのか、どう行動するのか?
そういった機微をつぶさにナイーヴに表現するゴズリングの演技力。
映像的にもカットバックを多様した発端と結果の巧みな見せ方。
ゴズリングの視線の先に注視させるカメラワークの妙味。
全ての要素が寡黙であり且つ饒舌。…なんですが!
ただ!ただですね。
静から動へ転じる際への暴力描写がかなり極端過ぎませんかね?という。
無駄にエグいバイオレンスというか。
話のトーンとしては通常パートと暴力パートが同じ色彩ではあるんで、タランティーノチックな笑える血生臭さでもないし、かといって日常と非日常の折り合いの付け方が余りにもバランス取れてなさ過ぎるというか。
どうにも珍妙な映画に仕上がってしまったなあ、と。
そして、この血みどろ加減を“男の美学”みたいに祭り上げられても「ええ?」となりませんか?
んで、だからってこのバランスが楽しめなかったという訳でもないし。
んーと。何でしょうか。
この監督さんの映画、本格的に楽しめるまでには暫く腰を据えて付き合ってくしかなさそうだなあ、と感じました。
自分的には、そんなスタンスですかね。
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