劇場公開日 2012年3月31日

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「【”愛してしまった隣人の妻と息子を守るために”穏やかな表情で”ドライブ”する哀しくも優しき男の姿を描く。】」ドライヴ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【”愛してしまった隣人の妻と息子を守るために”穏やかな表情で”ドライブ”する哀しくも優しき男の姿を描く。】

2020年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

幸せ

 ーこの映画が不思議と心に沁みるのは、ピーンと張りつめた緊張感溢れる静かなトーンと
 凄腕ドライバーの言葉少なきキッドを演じた、ライアン・ゴズリングの終始変わらない”穏やかで、喜怒哀楽を余り表面に出さない表情”の”細やかな変化”が各シークエンスできちんと描かれているところである。ー

 -ストーリー展開に無駄が一切なく、起承転結が鮮やかで、尺は100分というのも、潔い。-

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 キッド(ライアン・ゴズリング)は、昼は町の小さな車修理工場で働き、時折映画のカースタントをこなし、夜は”ドライブ”を稼業とする男。単調な毎日。

 ある日、キッドの住むアパートの隣の部屋に住むアイリーン(キャリー・マリガン:魅力的である・・)の車が故障し、キッドが働く工場に運ばれ、オーナーのシャノンから”家まで送ってやれ”と言われ、二人の距離は少し縮まる。
 キッドはアイリーンと息子ベニシオとも仲良くなり、一緒に川遊びをしたり、アイリーンと”安全運転のドライブ”に出掛けたり、それまでのキッドの生活に潤いが生まれる・・。

 -キッドが”微笑みながら”二人を見る眼は優しい・・。ー

 ある日、アイリーンの夫スタンダード(オスカー・アイザック)が刑務所から戻って来るところから、物語が静かに動き出してしまう・・。
 シャノンの車修理工場に時折顔を出し、彼からカーレース業進出を打診されていた、ニーノとバーニーの真の顔も見えて来る。

 -カーアクションシーンは、派手さはないが”サイドブレーキを引いたスピンターンを織り交ぜたり”、”相手の車の横っ腹に突っ込み、横転させたり”リアルなところが渋くて良い。-

 ■秀逸なシーンは数々あれど、
 1.エレベーターの中で、ニーノの部下に分からないように、口づけを交わすキッドとアイリーンの姿。光の加減が絶妙である。そして、吹っ切れたようにニーノの部下の顔を足で激しく蹴る。
 ーあれは、もう俺には近づくな・・、というキッドのメッセージだよなあ・・ー

 2.傷を負いながらキッドがアイリーンに掛けた電話のセリフ
 ”ある所にいき、もう戻れない・・。君とベニシオと居る時が一番幸せだった・・”
 -可成り、沁みるシーンである。-

 そしてラスボス、バーニーと対峙した後、40,000ドルの入ったボストンバックには目もくれずに、その場を去るキッドの姿。

<キッドの清々しいまでの、”一人の女性と息子を守るブレない姿”が実に心に響いた作品。不思議な余韻を残す作品でもある。>

NOBU