劇場公開日 2011年12月23日

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「古典落語さながらの粋な映画。リズミカルでスピーディな展開は現代作品に引けを取りません。」幕末太陽傳 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5古典落語さながらの粋な映画。リズミカルでスピーディな展開は現代作品に引けを取りません。

2012年1月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 タイトルからすると幕末の維新ものと早合点するひとも多いと思います。確かに高杉晋作ら攘夷派の志士たちは登場するもの、あくまで脇役。主人公は無一文ながら大尽遊びを繰り広げて居座る、幇間みたいな男なんです。その男がお代の代わりに居残り奉公に努める顛末を描いたのが本作。あらすじにあるとおり、遊女屋に居残った佐平次の巧みな交渉術で、あれよあれよと客も、店の番頭たちや遊女を丸め込んでしまうところが圧巻です。 その立て板に水を流したようにまくし立てる江戸弁が、粋なんですねぇ。
 元々は古典落語の名作から採った話なんですが、大看板の師匠にも負けない流暢さで丸め込んでしまう佐平次を、軽快に演じたフランキー堺の演技が何と言っても素晴らしかったです。
 現代の作品と比べて、大掛かりなアクションなど皆無ですが、遊郭を丸ごと作り込んだセットはなかなか規模がでかく、佐平次の動きを生き生きと捉えていました。そしてリズミカルでスピーディな展開は決して現代作品に引けを取っていないと思います。
 それと石原裕次郎、南田洋子、左幸子、芦川いずみら、日本映画黄金期の日活オールスター・キャストがずらりと出演していると、邦画全盛期のもつ独特のパワー感も見せつけられました。それぞれのキャストの存在感がとにかく凄いのです。台詞がないシーンでも。

 小地蔵がストーリーで注目したのは、佐平次の心意気。恐らく結核と診断されて、老い先短い命と診断された佐平次は、それを悲観しないばかりか、どうせなら短くぱぁ~と散らしてやるかと、遊郭でお大尽になってしまうなんて、なんてポジティブな発想なんでしょう。
 死ぬと分かっているから、佐平次にとって恐いものなしだったのです。その割り切り方が、腹の据わった交渉術を生み出したようです。

 最後に軽快にトンズラする佐平次の姿を見ていると、なんだか細かいことで人生を悩むなんて、馬鹿馬鹿しく思えてきました。ほんと、ケセラセラですよ。

 デジタル復刻版では、プリントと音声は、まるでニュープリントのように美しく復刻されていました。映像技術の進歩を感じさせる復刻版です。

流山の小地蔵