「渋好みの特殊部隊モノ」フランス特殊部隊GIGN エールフランス8969便ハイジャック事件 かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
渋好みの特殊部隊モノ
原題は『L'Assaut(アサルト)』
1994年にアルジェリアで発生した『エールフランス8969便ハイジャック事件』の解決までを映画化。
【ストーリー】
1994年、アルジェリア首都アルジェにて、エールフランス8969便がハイジャックされた。
犯人は反政府組織イスラム救国戦線の集団。
重武装した彼らは、自宅軟禁されていたイスラム救国戦線の指導者たちを解放させるよと要求するが、アルジェリア政府は反応がにぶい。
いらだつテロリストたちは、人質を一人また一人、見せしめに殺害してゆく。
フランス政府は事件発生後即座に、緊急対応チームを発足させ、フランス最強の特殊部隊GIGNを投入する。
さて、GIGNです。
「国家憲兵隊治安介入部隊」の頭文字で、ジェイジェン、またはジェイグンと読みます。
フランスご自慢の最強警察系特殊部隊で、この事件によって世界にその名が轟きました。
実際のフランスという国は「おフランス」イメージとはかけはなれ、非常に武張っておりまして。
世界史ひもとけば大量の戦争をひきおこしているのがわかります。
有名どころであげると、ナポレオンとか。
元々ゲルマン民族の国で、ドイツとは同族だからこそ仲悪いのかな?
GIGN結成の契機となったのは、1972年、ドイツのベルリンでおきたパレスチナ過激派『黒い九月』による、イスラエル代表選手大量殺戮事件の直後。
人質11名、警官1名、犯行グループ5名が死亡し、3人が逮捕された『ミュンヘンオリンピック事件』。
スピルバーグが監督した、イスラエル諜報特務庁、通称「モサド」による復讐をつづった『ミュンヘン』冒頭の事件ですね。
犠牲者の数からも分かるとおり、この時のドイツ警察の対応が非常にまずかったんですね。
新たな形態のテロに対応するため、西洋を主にした世界各国で、屋内制圧を主要任務とする警察系特殊部隊が、数おおく結成されました。
実際のこの事件を調べてみますと、死者はテロリストが見せしめに殺害した3人と、突入によって制圧されたテロリスト4人のみ。
20分におよぶ銃撃戦で、突入部隊のケガ人は9名。
人質や味方の死者ゼロは、この手の突入作戦では快挙です。
同じようにハイジャックされた1976年の『エンテベ空港奇襲作戦』。
『特攻サンダーボルト作戦』の元ネタになった事件で、こちらは、突入部隊員が1名、ウガンダ兵が数十名犠牲になってます。
エンテベ事件の航空機もエールフランスっていう、変な共通点もあります。
共通点っていえば、GIGNの特徴はあの前面防弾ガラスつけたヘルメットなんですが、当時ドイツの部隊も同じものを使ってたようで、そのへんも似てますね両国。
今はどちらもアメリカ軍ふうのものに変わっちゃってます。ざんねん。
カメラワークは良くも悪くもフランス映画で、2010年の作品ですが、色彩をおさえたモノトーンの、アーティスティックな画面になってます。
アクションシーンは、状況説明よりも発砲に注目した、スリルを際だてる撮り方。
テロリストもヒステリックなだけで、キャラ立ちはしていません。
リアルでもドラマチックでもない作りかたなので、面白いかと言われると微妙ですが、事件に興味をもたれた方にはいい教科書にはなる、んじゃないかな……(口ごもり)。
ところで、映画内でも使われていたGIGN装備のリボルバー拳銃、「マニューリン」って名前なんですが。
マニューリン。
フムウ、おフランスっぽい。
いい子は決して脳内で漢字変換しないでください。
現場からは以上です。