「細菌より物語や俳優をバラまきまくっている映画」コンテイジョン 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
細菌より物語や俳優をバラまきまくっている映画
未知の殺人ウイルスが世界中に蔓延する細菌パニックは、これまでにも『アウトブレイク』『感染列島』『28日後…』etc.散々やり尽くしたネタであり、イマイチ新鮮味が無い。
『トラフィック』『オーシャンズ3部作』の奇才スティーブン・ソダーバーグが豪華なキャスト陣率いて緊迫する修羅場を表現しているが、濃厚な割に淡白な味だった。
世界各地から高級食材取り寄せて、いざ究極のラーメン作ろうとしたのに、スガキヤラーメンみたいになっちゃったね…て感じ。
勿体無い
最初の発病者のグウィネス・パルトロウやWHO調査員のケイト・ウィンスレットetc.けっこう呆気なく病死させてバンバン見捨てていく残酷なテンポはブレがない。
が故に、全体的に駆け足で進みいつの間にか感染が爆発し、いつの間にか収束している印象。
発症→感染→爆発→暴動→新薬→開発→成功→投与→収束という一連の過程を切り張りして煮込み、ポンッと器に盛られ、一丁お待ちッてテーブルにポンってなもんだ。
ネットの風評拡大やテロ疑惑etc.今時のネタをトッピングしているけど、盛り上がりは浅く、世界観をあざとくしていて逆効果。
スープに世界規模のスケール感ある充実度は乏しい。
新薬発見とネットでデマかすフリー記者のジュード・ロウ、
病死した妻から感染を免れた旦那のマット・ディモン、
批判の矢面に立たされ、アメリカ政府の生け贄となるWHO幹部のローレンス・フィッシュバーン、
ウイルス震源地の香港で調査中、組織に拉致される医療スタッフのマリオン・コティヤールetc.
一癖も二癖もある逸材揃いなのにどれもダシは薄く、味の決め手に欠ける。
故に勿体無いの一言に尽きるのだ。
まあ、麺はノビてないから喰えるけど、DVDでお代わりなんざぁ煮玉子サービスでも御免かな。
こういう心理的なパニックものの後味の悪さに慣れて“免疫”が付いてしまった自分に気付くと、無性に気だるくなる。
野暮な免疫だね…
観賞中、息が詰まり、咳をしたくても、作品が作品だけに一つもできず、息苦しくて仕方ない一時であった。
無性に葛根湯が飲みたくなった帰り道にて、短歌を一首
『隔離せど 闇(病み)に飛び火し 熱の列 地球(ほし)は咳き込む 御触令(おふれ)に悔ゐ(杭)て』
by全竜