「今だからこそ観るべき映画」コンテイジョン といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
今だからこそ観るべき映画
「世界中に感染症が蔓延していく恐怖を描いた映画」という事前知識を持っている状態で鑑賞。「現在のコロナ感染症を予見していた」なんて言う方もいらっしゃいますが、そう思ってしまっても仕方ないくらいに、感染症が蔓延していく世界の描写が現在のコロナの感染爆発と一致しています。
コロナが蔓延している現在の世界状況と酷似していることから、本作が綿密なリサーチやシミュレーションに基づいて作成された映画だということがよくわかります。劇中の治安悪化描写はコロナのそれとは比較にならないほど酷い描かれ方をしていますが、「ここまで酷い状態になっていても何ら不思議ではなかったな」とも思えます。
とにかく、本作を鑑賞することで現在の我々と比較して「答え合わせ」しながら鑑賞することができる映画です。この映画は、間違いなく今観るべき作品です。
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中国から致死性の高い感染症が発生し、それは瞬く間に世界中に拡大していった。世界中で多数の感染者や死者が出ている中、恐怖に支配された人々の生活は次第に崩れていく。
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感染初期に妻と息子を失ったミッチ・エムホフ、感染症の研究を行うエリン医師、陰謀論やフェイクニュースの記事を書き株価の操作などを行う悪徳記者であるアラン・クラムウィディなど、様々な人物から物語が描かれる群像劇のような構成となっています。
キャッチコピーは「【恐怖】は、ウィルスよりも早く感染する。」です。これ以上に本作の内容を端的に表したキャッチコピーは無いでしょう。
現代の感染症は、ウィルス以上に情報の広がるスピードの方が遥かに早く、ウィルスの変異以上に人伝いでの情報はどんどん内容が変わり、事実とは異なる形で錯綜します。
本作ではネットブロガーのアランが「レンギョウにはウィルスに効果がある」というフェイクニュースを流布することでレンギョウを取り扱った会社の株価を操作するということを行なっていました。もしかしたら公開当時に観ていれば「民衆はそんなにバカじゃないだろ。こんなの騙されないよ」と思っていたかもしれませんが、コロナ禍を経験してしまえばそんなこと言えませんね。
総務省が昨年フェイクニュースや偽情報をどれくらい信じたかを調査し、白書で公開しています。「ビタミンDはコロナに効く」「納豆はコロナに効く」「漂白剤を飲むとコロナが治る」などなど、普通に考えて「そんなわけねぇだろ」と言う情報が広まり、一定の人がそれを完全に信じてしまったことが統計データとして出ています。
「コロナウイルスは5Gテクノロジーによって活性化する」という情報を信じている人は4.4%、「コロナウイルスは中国が極秘裏に製造していた生物兵器だ」というフェイクニュースを信じている人は21%。普通に考えてあり得ない情報ですが、普通に考える冷静さを欠いてしまったがために、このような情報が拡散されてしまったのだと思います。
「ウィルス耐性を持つ人がいてもすぐにワクチン作れない」ってのはリアリティがあって新鮮だと感じましたね。現代の我々から見れば、無症状感染者などでコロナの耐性がある人がいるのにワクチン開発に時間がかかり、特効薬もまだできていない状況だから当たり前ではありますが、一昔前までは「ウィルスに耐性を持つ人がいたら特効薬が作れる」という描写の創作が多かったように感じます。
ゾンビウイルスが蔓延した世界を描いたゲーム『ラスト・オブ・アス』とか、日本で致死性の極めて高い出血熱が蔓延する恐怖を描いた漫画『エマージング』とか、謎の感染症により荒廃した世界を描いたウィル・スミス主演の映画『アイ・アム・レジェンド』とか。「ウィルスに耐性がある人が見つかったらワクチン(特効薬)作れるぞ」っていう描写の作品は多数ありますが、本作のように「ウィルスに耐性があったところでワクチン作れませんよ」みたいな描写は珍しい気がしますし、コロナ禍を知っている私たちからしてみればそこはかとないリアリティを感じるんです。
緻密なリサーチと綿密なシミュレーションにより生み出された、予言とも思えるほどに練りこまれたストーリー。
本作は間違いなく今観るべき映画です。オススメです。