「シュミレーション」コンテイジョン U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
シュミレーション
不本意にも本年度に脚光を浴びた作品。
未知のウィルスによるパンデミックを描いてる。現在のコロナウィルスが猛威をふるう世界との近似値は不明だが、よく出来てた。
WHOでの活動もワクチンの開発も、それを届けるのも生産するのも、当たり前だが人間がやってる。僕らは結果だけを手にする。
感謝しなくてはいけないと強く思う。
「人は1人では生きていけない」ってのと「人が3人集まれば戦争が起きる」って言葉の意味をぼんやりと考える。
自分の見識が全てではなく、憶測は憶測でしかないのだという事を強く心に留めておくべきだ。
勿論、劇中で行われている事と実際の事には差異があるのは当然で、ドラマチックに語られる部分も多分にあるだろう。だけど、やはり…今の現状を反映してしまい目を離せない。
感染が拡大していく様が、ほんとに静かで…この辺は凄くリアルを感じてしまう。
またBGMが良くて困る。
感染の経路については、劇中ではとんでもない感染力であり、おおよそ都市部では防ぎようが見つからない。
潜伏期間が3日とかなりスピーディーで、発症から死亡までが4日くらいと悪魔のようなウィルスである。
大事な人も隣人も、あっという間に死んでいく。この現象を疑似体験できただけでも、今コレを観た価値があるとも考える。
劇中では様々な予測が描かれる。
ワクチンが出来上がるまでの世界は、相当危険なようだ。街も人も荒廃していく。
病院の待合室は人で溢れ返り、飛沫感染が疑われる中怒号が乱れ飛んでたり、流通が滞り食糧が供給されなかったり…それを奪い合うシーンがあったり、地獄絵図だ。
また、映画だからある程度のリアリズムをもって話が展開されていくから説得力もある。
悲しいかな、現実にもその兆しはある。
マスクを買う為に薬局に長蛇の列が出来上がったり、争奪戦が起こったり。
薬局の店員からの悲鳴は毎日のようにネットにあげられる。
まだ劇中の世界観からしてみれば序章にも至ってないのだけれど。
ワクチンを政治利用する背景があったり、ネットの真偽を問うてみたり。
ネットを鵜呑みにする怖さと、公式発表を鵜呑みにする怖さは、ほぼ同レベルだ。
たった1人を起点に何百万人が死んでいく世界。どおしても「今」とリンクする。
…この作品は近しい未来なのか、それとも、作り話として映画史に埋もれていくのか。
全ては僕らにかかってる。
作品はワクチンの流通をもって幕が閉じる。
よく出来てるなぁと思うのは、そのワクチンを摂取した後の危険性にも言及してる事だ。
その危険を隠蔽して金儲けに動いてるってのは飛躍もあるかなとは思うけど、後遺症までは分からない。
早急で緊急な案件だからだ。
「今」をとるか「未来」をとるか。
今が無くなれば未来もないから、今をとるしかないのだけれど、それが故に抱え込む時限爆弾みたいものはあるのかなぁとも思う。
凄い怖い映画で…今だからこそ、その怖さは増幅される。
ウィルスと共に感染が拡大されていく不安こそが世界を混沌の底に突き落とすと思われる。
失った人は戻ってはこないけれども、生きてさえいれば取り戻せるものは多い。
乗り越えた先を暗示するラストだった。
のだけれど、その後に語られる「1日目」に戦慄する。
疑似体験のまま終わってくれと切に願うが…ウィルスによるパンデミックは繰り返されるのであろうな、とも思う。