「タイトルなし」ものすごくうるさくて、ありえないほど近い kazuyuki chataniさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし
映画って難しい。間違いなく秀作なんですが、素晴らしいと感じたかと言うと…。でも駄作ではないです、決して。何とも言いようの難しい作品。
まず主人公の男の子に乗り切れなかった。父親を理不尽に亡くしてああなるのもとってもよくわかるし文句のつけようもないんだけど、彼に乗り切れなかった。これは単純に自分の精神年齢が子供で赦しがないからかも。ただ加えて関係するのかもしれないのが9.11。この映画の背景でしかないので「それを言っちゃあお終いだろ」と自分でも思うんだけど、やっぱり"お互い様やろ。アメリカもそれ以上殺してるだろ。被害者ぶるなよ"と無意識に感じてしまう。他の映画では考えもしないのになぜだろう。
また、祖父とのエピソードや鍵の顛末その他、踏み込みきれていない、散漫で取り留めのない印象で終わってしまったと感じた。これも他の映画でもっとテーマから離れた着地の仕方をしている作品はゴマンとあるのに、この映画だけ気になってしまったのがなぜかわからない。でも例えばクーリンチェ少年殺人事件を自分は映画史指折りの傑作だと思うが、あれは少年少女の喧嘩や恋模様の裏に台湾の歴史を含ませている所に強烈な迫力を感じる。そう思うと、この作品の中のアメリカの歴史に血生臭さと被害者意識だけを感じてしまい、心の何処かで「飛行機は何の理由もなくツインタワーに突っ込まんよ」と思ってしまう。歴史を背負いきれてないっていうのか。エドワード・ヤンってやっぱり凄いんだな、とは思った。彼なら何とかしている気がするから。
結局よくわからなくなった。映画って難しい。
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