「独りじゃなかった」ものすごくうるさくて、ありえないほど近い マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
独りじゃなかった
少年オスカーのトーマス・ホーンが素晴らしい。長台詞もこなし、この作品の実質的な主演にあたる。これはエンドロールで、トム・ハンクスとサンドラ・ブロックが一緒なのに対し、直後にトーマス・ホーンの名が単独で出ることからも分かる。
オスカーは、父の死に於いて大きな十字架を背負っている。
母親はもちろん、誰にも話したことのない重い十字架だ。
母親をはじめ、周りの大人達は、オスカーの心が不安定なのは、父親のことを忘れられず、父親の死を受け入れられないからだと思っている。
もちろん、そうなのだが、根はもっと深いところにある。
オスカーにとって、偶然見つけた鍵は、父親の遺品であり、父親との絆を繋ぎ止めてくれるたったひとつの拠りどころだ。
何がなんでも、鍵の秘密を解き明かしたい、そのエネルギーは十字架の重さにもがき苦しむ反動によるものだ。
だが、オスカーは独りではなかったのだ。いつだって母親が見守っていた。オスカーが気がつかなかっただけだ。
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い存在。
母親とはそういうものかも知れない。
そしてまた、オスカーも母を辛さから守り通したのだ。
だからこそオスカーが歩きまわった軌跡を、母親と共有できたシーンには、喉に塊ができてなかなか落ちない。
「何かが分からないよりは何かが判っただけでもよかった」。オスカーの負の心が解き放たれ、思考が前向きになった証しだ。
前向きな人の前にはサプライズも待っているものだ。
そして、祖母と間借り人が楽しい。
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