「大切な人を失ったとき、この一本が必要になると思う。」ものすごくうるさくて、ありえないほど近い JYARIさんの映画レビュー(感想・評価)
大切な人を失ったとき、この一本が必要になると思う。
近頃流行りの病気である大切な人が亡くなりました。
何があった日にも、日本を明るい笑顔で包んでくれた方です。
太陽が無くなるとどうしたらいいのか未だに分からなくなるのが、私たちだと思います。
そんな暗く沈んだ日に観た一本。
この日ほど今作を観るのに適していた日はないと思います。
主人公は大きな音が苦手な男の子。
彼もまた、大切な人を失います。父親です。
彼のほとんどは父親で出来ていたのに。
彼の独特な部分、個性的な人とは違う部分を父親だけが
才能だと言って認めてくれていたんですね。
そして、彼は父親が残した鍵を開くものを探す旅にでる。
この瞬間から、彼は旅することで父が亡くなった哀しみを埋めようとし、
また、こうすることでしか生きていけなくなってしまいます。
父が残した旅こそが息子の生きる意味となり、息子を成長させるきっかけにも
なっていました。
(ここで祖父が出てきて共に旅する展開もグッドでした)
鍵の持ち主が発覚し、彼は今まで追いかけていた父の姿を見失しないます。
ここで父の亡くした911の日のことを思い出します。
出れなかった電話。ここに彼が上手く父親と別れられなかった理由があったのだと考えられます。。
心のしこりが取れないまま苦しい日々を過ごしていたのでしょう。
終盤、母親と向き合わなくてはならないときが訪れます。
今まで影の薄かった母親がここにきてぐっと距離を縮めます。
すべてを彼女は知っていて、先回りしておいた。
この事実には、涙をこらえることができませんでした。
この深い愛情を知って、彼は父親のいない世界で生きる意味を見つけ出します。
なんて素敵なストーリーなのでしょう。
911を軸に描きながらも、こんなにあたたかく、しかもこんな社会でも生きていける希望を感じさせます。
冗長だとか、いろいろ意見はあるだろうとは思いますが、
唐突に大切な人を失った人には届くであろう一本です。
また、トムハンクスも良かった。
そしてサンドラブロックも。なんて良い女優さんなんでしょうか。
最近になってやっと魅力がわかりました。
理不尽なことで急に誰かを失うことがあります。
それでも日常は続きます。
しかし、あたりまえのような日常の中にその人を失った行き所のない痛みを発散させる
空白の時間が存在するはずです。
その空白の時間に、そっと共感し、そしてまた前を向く強さをくれた作品でした。
この映画がなければ、もっと憂鬱な気持ちがつづいていただろうと思います。