劇場公開日 2012年5月18日

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「不思議がいっぱい」ファミリー・ツリー つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5不思議がいっぱい

2023年11月19日
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鑑賞方法:DVD/BD

アレクサンダー・ペイン監督の作品群を見てみると、派手さはないが綿密に積み上げられていく温かさがある脚本を書く人のように思う。よく言えば素朴で優しい味わい。
しかし裏を返せば、明白で強烈なメッセージ性を持っていないとも言える。
人それぞれ好みがあるので良し悪しは言えないけれど、ふわふわとしてとらえどころのない作風は本作「ファミリーツリー」にも当てはまる。

たまたま偶然手にした先祖の土地も、たまたま偶然家族になった者たちも、たまたま偶然だけでは平穏に維持することはできない。土地に対しても家族に対しても多少の努力と気遣いは必要だ。
そしてたまたま偶然は続いていく。っと、まあ多分こんな感じのふわふわした作品だったかなと思う。

ジョージ・クルーニー演じる主人公マットと娘二人は、妻(母)の死を前に分裂寸前。そんな家族を破天荒な母が脳死状態でありながら修復していくという不思議な物語。
厳密には母はもちろん何もしないし、分裂の原因の大部分を彼女がもたらしているので、字面ほどハートフルではないし、結構ドロドロしている。
それでも、エンディングでは温かな気持ちになるのだから不思議だ。

私的に一番面白かったポイントは、長女のボーイフレンドのシドのキャラクターだ。
初めは単なるアホなティーンエイジャーで、本当に殴りたくなるような男なのだが、マットら家族と行動を共にしていく中で、次第に素敵な一面をみせるようになっていく。
多少はシドの内面にも変化があったかもしれないが、最初のアホさは彼の一部分でしかなく、脳死状態の母と同じように隠された別の顔も持っているのだ。
ラスト付近ではカッコいい男にしか見えなくなっているのが、これまた不思議で面白い。

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つとみ