「モーションペインティング(動く絵)であり、モーションピクチャー(映画)ではない」ブリューゲルの動く絵 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
モーションペインティング(動く絵)であり、モーションピクチャー(映画)ではない
西洋絵画と映画とは似ていると思う
絵画に込められた意味、画家の本当の意図は漠然と表面に眺めていては解けないことがある
映画もまたしかり
ブリューゲルは2017年に大規模な展示会が日本各地で巡回もされ、彼の代表作の一つの「バベルの塔」を中心に紹介がなされたので観た方も多かろう
その絵はラストシーンで「ゴルゴタの丘への行進」の左側に展示されている
本作ではそれではなく、彼の本当の代表作「ゴルゴタの丘への行進」についての解釈を、その絵画の中に私達が放り込まれ、その中で起こる当時の出来事を目撃しそれをブリューゲルが如何に絵画として描いたのかを映画にして理解を進める事をテーマにしている
本作は日本語タイトルの通り「ブリューゲルの動く絵」である
つまり、モーションペインティング(動く絵)であり、モーションピクチャー(映画)ではない
だから、台詞は極力ない
話すのはブリューゲルとその話相手くらいだ
特に冒頭は30分近く一切の会話がない
なぜならその他の登場人物は全てブリューゲルの絵の中の人物であるのだから
絵画に描かれた人物は口をきいたりはしないのだ
フランドル派の絵画でも特にブリューゲルやヒエロニムス・ボスの絵は難解でその意味を解説して貰わないとなかなか理解できない
本作を観たことで「ゴルゴタの丘への行進」の解釈について、詳しく理解することができた
如何に漫然と表面的に観ていただけったかと思い知らされた
大変に勉強になった映画だ
映像も本当にブリューゲルが描いた絵画のような映像で動く
光線の当たり具合、霞みなどの空気感、彩度、色温度なども絵画に合わせて来ている
もちろん衣装、小道具、セットの考証は全く絵の中のそのままであり感嘆するばかりだ
しかし映画としてほどうか
はっきりいってつまらない
ブリューゲルの絵に思い入れがなければつらい時間になるのではないだろうか