ブリューゲルの動く絵のレビュー・感想・評価
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モーションペインティング(動く絵)であり、モーションピクチャー(映画)ではない
西洋絵画と映画とは似ていると思う 絵画に込められた意味、画家の本当の意図は漠然と表面に眺めていては解けないことがある 映画もまたしかり ブリューゲルは2017年に大規模な展示会が日本各地で巡回もされ、彼の代表作の一つの「バベルの塔」を中心に紹介がなされたので観た方も多かろう その絵はラストシーンで「ゴルゴタの丘への行進」の左側に展示されている 本作ではそれではなく、彼の本当の代表作「ゴルゴタの丘への行進」についての解釈を、その絵画の中に私達が放り込まれ、その中で起こる当時の出来事を目撃しそれをブリューゲルが如何に絵画として描いたのかを映画にして理解を進める事をテーマにしている 本作は日本語タイトルの通り「ブリューゲルの動く絵」である つまり、モーションペインティング(動く絵)であり、モーションピクチャー(映画)ではない だから、台詞は極力ない 話すのはブリューゲルとその話相手くらいだ 特に冒頭は30分近く一切の会話がない なぜならその他の登場人物は全てブリューゲルの絵の中の人物であるのだから 絵画に描かれた人物は口をきいたりはしないのだ フランドル派の絵画でも特にブリューゲルやヒエロニムス・ボスの絵は難解でその意味を解説して貰わないとなかなか理解できない 本作を観たことで「ゴルゴタの丘への行進」の解釈について、詳しく理解することができた 如何に漫然と表面的に観ていただけったかと思い知らされた 大変に勉強になった映画だ 映像も本当にブリューゲルが描いた絵画のような映像で動く 光線の当たり具合、霞みなどの空気感、彩度、色温度なども絵画に合わせて来ている もちろん衣装、小道具、セットの考証は全く絵の中のそのままであり感嘆するばかりだ しかし映画としてほどうか はっきりいってつまらない ブリューゲルの絵に思い入れがなければつらい時間になるのではないだろうか
The mill just stand there, looking down everything. NHKかな?
「ブリューゲル展」に行った後に、そのままの勢いで観賞しました。ブリューゲルと言えばメッチャ緻密な絵を描いた事で有名です。解りやすく例えるなら「ウォーリーを探せ」みたいな感じです(「ウォーリーを探せ」作った人はブリューゲルの絵を観てウォーリーを思い付いたに違いない!?)。この映画はそんなブリューゲルの作品の中でも「十字架を担うキリスト」を映像化しています。
まぁ、ブリューゲル好きな人でないと観ようともしないタイプの映画でしょうけど、映画としては淡々と進み間違いなく眠気を誘われます。民衆の暮らしをよく映像化してるなぁっとは思うのですが、逆に民衆の暮らしを追っているだけなので台詞も少なく、盛り上がりに欠けるというか・・・それこそ映画というより博物館や美術館で流される映像作品って感じです。
時代も16世紀のブリューゲルなのか、イエス・キリストの時代なのかわかんなくなりますし、そもそもの主題がブリューゲルなのか、キリストがなのかも曖昧になってきます。だいたい撮影当時既に60歳近かったルトガー・ハウアーに40代で亡くなったブリューゲルを演じさせるの無理がないか?っと思ってしまう訳です。
人物の多いブリューゲルの絵の登場人物一人一人にストーリーを当てようとした努力は理解できますが、ブリューゲルを好きな人に向けたとしては何とも中途半端な感じですし、知らない人には何じゃこりゃ?な作品。何かもう少し上手くできたろうにね。画面の作り方が綺麗なだけに内容が伴ってなくって残念でした!
洒落てんな~って。(○´∀`○)
何でPG12なのかなって思ってみてたら、途中ビックリするくらい凄惨なシーンが(笑) 原初的な生活をひたすらに流す。ある意味、神様にとっての、ディスカバリーチャンネルまたは、BBC Earthかなんかだと思ってみれば最後まで観れるかも。俺は寝たけど・・・。
知的好奇心を刺激される実験作
フランドルの画家ピーテル・ブリューゲルの絵画「ゴルゴダの丘への行進」に描かれた市井の人々が映像となって動く。まさに“動く絵”である。背景は絵画のそれで前景は市井の人々に扮した役者が実際に動く事で、まるで観客を絵画の中に紛れ込んだような不思議な感覚に誘う。こんな経験は初めてだが、残念ながら私はブリューゲルの名前と作品は「バベルの塔」くらいしか知らなかったので、観ている途中で、この作品を観るには知識が足りない!と、とても歯がゆかった。映像を観る前に、まずは、この絵をじっくり観ておきたいし(出来れば、ブリューゲルのほかの作品も)、ブリューゲルについて、そしてその時代についてもある程度は知識を持っておきたい。この作品と一緒にブリューゲルとその作品についてのドキュメンタリー(があれば)を観られるといいと思った。ルーブル美術館で上映されたというのも納得。いい企画だと思う。
何となく見入ってしまう意欲作
DVDで見ました。
<ストーリー ☆>
絵画鑑賞が好きな自分でも退屈に感じる凄まじく遅いテンポ。起承転結がどこにあったのだろうかと思うわかりづらい展開。ただ抽象的で詩のような台詞が作品に独特の雰囲気を加えています。
<キャスティング ☆>
唯一見たことあるな、と感じたのが十字架にかけられてしまう青年の母親役。いわゆる美人さんではありませんが、画面で存在感を出しています。
<画面 ☆☆>
どこを切り取っても絵になります。
台詞も説明も少ないのになぜか見入ってしまった96分。
映像で見ている人に感じさせるものがある、それこそ映画なのかと思わせられた作品です。
ピーター・ブリューゲルの絵のことをもっと勉強していたら、より深く楽しめたかもしれません。
以上をふまえて2.0点です。
風車(神の眼)から見る市民の生活
映画は娯楽か、芸術か?個人的に映画は娯楽だと思っている。しかし一言で娯楽と言っても様々な娯楽があるわけで、観る人によって娯楽の差はある。思い切りハリウッド・メジャーを娯楽と思う人もいれば、哲学的テーマを掲げた小難しい作品を娯楽(エンターテインメント)と思う人もいる。もちろん私は後者なのだが、前者を否定するつもりは全く無い。
さて、そんな芸術性の高い娯楽映画(笑)である本作は、タイトルどおり、ブリューゲルの絵が動いている。現代のCG技術と古典的な技法を駆使して、16世紀のフランドル地方の市民生活を再現してみせるのは、『バスキア』の制作・脚本を担当したポーランドの鬼才マジュースキー。1枚の絵の中に膨大な人物を登場させ、聖書物語の中に、真の人々の生活を活写した天才画家ブリューゲルの「十字架を担うキリスト」に“恋”した監督が、劇中の1シーンで、その絵画を細部に至るまでを完全コピーした驚きの映像は圧巻だ。しかし、絵画の完コピが本作の目的なのではなく、そこに描かれた“人々の暮らし”を模写することが監督の狙いなのだ。
朝靄につつまれる中、小高い丘の上に立つ、風車が轟音と共に麦を挽きはじめると、村人たちは目覚め、1日が始まる。絵画の象徴とされる風車はまさに神の目線(キリスト教でパンはキリストの肉体を指しており、そのパンを作る小麦を挽く風車こそ神そのものという意味もある)であり、侵略者によって迫害される貧しい人々をクローズアップしていく。ブリューゲルが描く通りその目は、ゴルゴダの丘に向かうキリストだけが主役なのではなく、キリストの磔刑に関わる(野次馬を含め)すべての人々を余すことなく見つめる。涙する聖母や、裏切者ユダだけではなく、役人や子牛を売る若夫婦、パン売り、道化、子供たち、そして画家本人の“想い(=祈り)”を神に捧げる。
キリスト復活までの村の生活を、温かく時に残酷に描くことで、市井の人々の不屈の精神を表現したのだ。そう、まさしくブリューゲルの描いた絵画のように・・・。
ブリューゲルにエドガー・ハウアー、そのパトロンにマイケル・ヨーク、聖母マリアにシャーロット・ランプリングという、映画ファン垂涎の珠玉のキャスティングで、静かで力強い芸術的エンターテインメントに挑んだ監督のチャレンジ精神に、私自身も神に祈りを捧げたい。
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