「観ている人間が大人になる苦しみを疑似体験させられるエヴァシリーズの純文学編」ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
観ている人間が大人になる苦しみを疑似体験させられるエヴァシリーズの純文学編
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四度目の視聴。シン・エヴァンゲリオン後ということもあってか、Qは最も庵野秀明らしい作品と感じた。破で見せつけたエンタテインメント的高揚感を、観客の期待や予想をことごとく裏切っていく見事な展開。プロデュサー兼任の庵野、凄く発想力と勇気が有る作家と思えた。
初見の時は訳が分からず途方にくれたが、今見ると何が何だか分からないシンジ視点への徹底したこだわりを強く感じた。観客への解説的サービス殆ど無しにここまで出来るのはやはり凄い。
ニアサードインパクトの責任を問われ続けるシンジ。冷たいミサト、アスカ、レイ。打ちのめされるシンジ。それを安易に消しさろうとして、フォースインパクトのトリガーになってしまうシンジ。重く苦しく、何でこんなものを見させられるか?とも思ってしまうが、シンジは映画の不人気・悪評・悪意も全て責任がかかる庵野の分身であることを、あらためて認識させられる。本作はエヴァシリーズの言わば純文学編ということか。観ている人間が大人になる苦しみそのものを疑似体験させられる。
そしてラスト、何度見ても荒れ果てた赤い大地をバックに始まる宇多田ヒカルによる桜流しの歌詞も含めた儚さと美しさに陶然とさせられる。
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