「肝心のブルースの出番が少ないのが不満」キリング・ショット 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
肝心のブルースの出番が少ないのが不満
小地蔵は、タランティーノが嫌いです。
本作は、そのタランティーノ要素たっぷりの、でも所詮タランティーノもどきで終わった作品でした。
そのタランティーノらしさとは、冒頭のとりとめのないガールズトークの意味のない会話に、色濃く出ています。
そして、何度も同じシチュエーションにカットバックする時間軸のリフレインのくどさ。ガールズトークしていた3人娘が強盗に早変わりして、店の女主人に銃を突きつける午前3時の時点に何度も戻りながら、少しずつ前後のエピソードをネタバレしていきます。 そして、銃を突きつけたあとは、新手の介入者が乱入して三すくみで銃を突きつけあうという不条理な関係が描かれるのです。
なかなか意外性のある展開で、観客をアッと言わせたいのはわかります。でも三すくみとなってしまった混沌とした状況が、どうしてこうなったのか、登場人物たちの思惑と動機が凄く解りにくかったです。たぶんラストのネタバレを一回見てから、二度目で事件が起きる事情を観客なりに再確認しなければならないでしょう。一度目の鑑賞では全く先が読めず、謎が深まるばかりでした。
ところで、たぶん本作を見ようと思う方のお目当ては、ブルース・ウィリスのアクションではないでしょうか。
ところが主演にしては出番が遅く、前半は謎の男として、顔の一部しか露出しません。しかし派手なアクションはなく、至近距離からの銃撃戦のみです。ブルースにしては役不足な感じです。最近彼の出演作は、『エクスペンダブルズ』を除き、アクションもサスペンスも冴えないものばかり。だいたいアクションも避けているのか、派手なものは皆無になってきています。年齢的に仕方ないとは思いますが、性格俳優への転進に意欲的なジャッキーとは違ってブルースの場合は、今後の展開が見えてきません。
ともかく本筋は、冒頭に出てくる3人娘は、ボスのメルのパシリと成り、麻薬密売や
窃盗に当たってきたのです。最近シマを荒らす奴がいるので、麻薬売買の現場を押さえろと指定された郊外のパブに向かっただけなのでした。けれども約束の時間が大幅に過ぎても麻薬の密売人は現れず、痺れを切らした3人娘は、事情を聞こうと女店主に銃を向けたのです。けれども女主人によって瞬く間に3人のうち2人が殺されます。残ったひとりは女主人を殺害したものの、今度はハブのコックのビリーと銃を向けあったまま腹の探り合いをする様に。ビリーはビリーで、ボスのメルから仕事にしくじった3人娘の殺害を依頼されたというから話はややこしくなります。一体メルの真意はどこにあるのかさっぱり分からなくなりました。
そこに輪をかけて、3人娘を追ってきた殺し屋が登場。保安官を撃ち殺して偽警官に成りすまして3人娘を追ってきた意図は意外なものでした。
この殺し屋もメルの片腕だというからややこしい。しかもこいつが狙っていたのは、コックが受け取る3人娘の殺害の報奨金目当てだったのです。さらにこの殺し屋の正体は、3人娘の生き残ったリーダー格テスをメルを引き合わせた自称“配達人”のロニーでした。ロニーはテスに恋心を抱いており、ビリーからカネを奪って逃げようと持ちかけます。けれどもテスは完全にロニーのことを忘れてしまっていて、殺し屋の言葉にただ迷うばかりでした。さて、こんな3すくみ状態の結末はいかにといのが、本作のクライマックス。 ここでお気づきの通り、ボスのメルはあくまで黒幕で、そんなに本筋に絡んでいないのですね。こんな企画によくブルースは出演OKしたものです。
まあいい面は、銃撃戦が派手で見応えあるのと、テスの強気ぶりが、無理無理なストーリーを強引に引っ張っていくことです。そして、本作でブルース以上に存在たっぷりなのが、“配達人”のロニー。本作ではいろいろな顔を見せてくれます。殺そうと近づいた保安官に見せる小心な一市民としての顔。一瞬で男の腕をひねり上げる殺し屋としての顔。そして、保安官に成りすまして、テスたちをねちねち職質するストーカーとしての顔。ロニー役のフォレスト・ウィテカーは、本作でまるで別人のように変わる七変化を見せ付けてくれました。
この3すくみ状態の緊迫感を評価すべきか、それともチトオチに無理があるところを非難するのか、見た人の評価が分かれてきそうです。