「一人の女性の中にいる二人の男」あなたへ studiofplusさんの映画レビュー(感想・評価)
一人の女性の中にいる二人の男
ようやく高倉健さんの映画「あなたへ」を観ました。
NHKのドキュメンタリーなどは、かなり前に観てはいたのですが。
この映画のタイトル「あなたへ」という意味が最初わかりませんでした。
よくよく観ると、この映画は自分が愛した女性の中には、
自分よりも愛する他の男がいて、その想いは消すことが
できないものだという、女性の物語なのだと気が付きました。
それが故に、この映画には様々なバックグラウンドを持つ
女性が登場してきます。
ある女性は夫に献身的な人だったり、またある女性は
行方がわからなくなった夫をひたすら待ち続ける人だったりと。
最後に佐藤浩市さんの伏線がラストに持って来られているので、
どうしてもこの映画の一番言いたかった事が読み取りにくい作品になっていると思います。
ラストに高倉健さんが不倫されている夫を演じる草彅剛さんをジッと見つめて、そのまま一人歩いて去っていくシーンは、ものすごい男の孤独を感じさせるシーンでした。まさに、これぞ高倉健さんの映画なんだと思いました。
自分は本当に愛した妻に愛されていたのだろうか?と
自問自答しながらの旅の終わりに、男が見た結末とは、
やはり妻には心から愛した男が別にいた(死亡した受刑者)
それは変わることがなかったと、あらためて思い知らされるという。
映画なので、様々な見方があり、様々な感想があるのが当たり前だと思います。
ただ、この映画のメインテーマが美しい「夫婦愛」だと勘違い
している人が多いような気がします。
そうではなくて、実はどんなに愛し続けても
愛されることはなかったという、男の「孤独」がメインテーマであり、
それを肉体や表情でお芝居できるのは、唯一、高倉健さんだったという映画だと、私は思いました。
受け入れる立場にあるのが女性だと仮に動物的に考えたとしたら、
それは仕方のないことなのかもしれません。
いつも選択するのは女性で、選択されるのは男性。
そんな感想を持った映画でした。
この映画、意味が良くわからず旅で出会うストーリーに気が取られて本質が見えてませんでした。
レビューを読ませて頂いて、今更ながら良く解りました。素晴らしい感性をお持ちですね。
改めて、また観てみたいと思います。
ありがとうございました。