「良い映画に出会えました。」あなたへ 迷い猫さんの映画レビュー(感想・評価)
良い映画に出会えました。
「あなたへ」は夫婦愛について、深く考えさせられる秀悦な作品でした。
「さようなら」の意味するものがあまりに深く謎めいていた為、映画の鑑賞後直ちに書店で原作を購入せずにはいられませんでした。
原作では、冒頭で倉島英二と余命わずかな洋子さんとの温かい夫婦愛が多くのページを割いて描かれており、長崎で受け取った2通目の手紙も、便箋3枚に洋子さんの英二への温かい思いがいっぱいに綴られていました。
映画では夫婦愛に関する描写が最小限に抑えられ、また2通目の手紙も「さようなら」の一言に変更されており、そのため、ある意味淡々とストーリーが展開していくことになりました。
監督、高倉健さん他出演者の方々はおそらく、原作を繰り返し読まれたに違いありません。
その作品は、私の心を、そして涙腺を激しく揺さぶる素晴らしい内容だったと思います。
その原作の、要とも言うべき上記部分をあえて変更したところに、私は、映画関係者のこの映画に賭ける熱い思いを感じぜずにはいられませんでした。
私は思います。
2通目の手紙を簡潔にした事により、この映画が、倉島夫婦だけの物語ではなく、劇場に同席した全ての夫婦&恋人たちに贈る、ラブストーリーになったのではないでしょうか。
それぞれが互いを思い、最後の別れに際し何を思い、相手に願うのか、しっとりと考える時間をくれたように思います。
エンディングの音楽と画面が止るまで、誰一人席を立たなかったことが、この映画の価値を明示しているのではないでしょうか。
素敵な映画に久々に出会えたことに、感謝して止みません。
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