「一羽のスズメ」あなたへ マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
一羽のスズメ
妻の遺骨を携え、一度も行ったことのない妻の故郷・長崎の薄香へ自家製キャンピングカーを走らせるロードムービーだが、それぞれのエピソードは淡白で希薄だ。その割に出来過ぎなぐらいリンクする。
妻との思い出の地も都合よくコース上に点在する。ご当地の催事がお決まりのように挿入されるこの手のタイアップは取って付けたような不自然さがあり、どうにかならないものか。
良くも悪くも健さんの映画。健さんを見る映画だ。高倉健の存在感は大きい。
倉島が〈鳩〉になるためのケジメとして、世話になった総務部長の塚本宛てに郵便物を投函する姿は倉島の実直さを偲ばせるシーンで、高倉健本人の人柄が重なる。
*〈鳩〉が何を意味するか、ここでは伏せておく。
妻・洋子がなぜ故郷の海への散骨を願ったのか、その真意は分からない。
洋子の絵手紙にはいつも一羽のスズメが描かれている。洋子は倉島の人生の一部に宿らせてもらった気持ちでいたのではないだろうか。同じ墓に入ることで倉島の残りの人生にまで介入することが無いようにとの配慮ととれる。
また、倉島と知り合う以前に愛した男への遠慮もあったかもしれない。
町の写真館で見つけた古い写真に拳で軽くコツンとやる仕草は、「余計な気を使いやがって」と「ありがとう」がないまぜになった倉島の気持ちの現れであろう。
絵手紙が「さようなら」と空に羽ばたき、倉島もまた〈鳩〉となって新しい人生へと飛び立つ。
いい話だと思う。ただ映画としてみたとき、話の芯がどこにあるのか掴みづらく、話の運びもリズムが合わなかったというのが正直な感想だ。10年後に観たら違うかもしれないが・・・。
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