灼熱の魂のレビュー・感想・評価
全91件中、21~40件目を表示
鑑賞動機:ドゥニ・ヴィルヌーヴ10割
いやいやいやちょっと待て待て、そんなの有りなの?!(あり)
母ちゃん過去編は序盤から中々ハードな話で、それなりに覚悟もして観はじめたが、双子現在編のルベルさんの朴訥さについほっこりして、油断した。ああ確かにミステリだこれ。レバノンって一言も言ってないと思うが、レバノンなんでしょうね。
戯曲の映画化なので、基本的なストーリーはそちらに負っていると思うが、色々な仕込みや映画だからこその見せ方に翻弄される。恋人、バスの運転手、乗客の子供、刑務所での叫び声とか感情がついていかない。姉弟の旅路は、それでも何とか穏便に終わると思っていたのに、何か違和感を感じ出したところでアレが炸裂して…。
母ちゃんの用意周到さを見るに、どうすべきか、どうしてもらいたいか、考えに考え抜いて、準備できてから逝ったのだろうか。
憎しみが足し算のように増えていくみたいなセリフがあったけど、それもあれに繋がっているのだろうか。1+1=に。
でも、どうするのだろうこの後。
なんか上手く受け止められなくて、尾を引きそう。
うーん
日本人には馴染みのない世界線で理解がとても難しかった。ただ戦争で人の命が奪われていくシーンは本当に辛かった。
母と娘とシーンが切り替わるのですが
2人とも顔が似ててどっちの話をしてるのかわからなくなる。真剣に観てればもちろんわかると思うんですけど、一瞬目を離すとシーンが切り替わっててわからなくなった。
母親はいつあの遺書を書いたんだろう。
見逃したかも…
1+1=…
物語のメイン人物である双子の姉が母の遺言通りに父を探しながら母の過去を辿っていくのですが、まぁ序盤は退屈で仕方なかった。
しかも現代の娘のシーンと母の過去シーンを交互に出されても、母と娘が初めは同一人物か?と思えるくらい見分けが付かなくて、切り替わりがわかりにくかった。
中盤から見分け付くようになりましたが。
それにしても母の過去が凄まじのなんの…。
好きな男は目の前で射殺、子供は施設に入ったものの戦争やらテロやらで死亡(本当は生きてる)、派閥のお偉いさんを殺して刑務所に入れられる、しかも拷問でレ◯プされて双子を出産…。並の精神力じゃない。
辛いの一言じゃ済まないのでなんて言って良いかわかりません。
姉は自分たちがレ◯プされて産まれた事を知るんですが、それだけでも信じたくない話なのに、双子の弟が兄を捜索して知った事実が更にヤバい。
1+1=1の意味を理解した姉の反応が1番怖くてビックリした。
どんな真実が明かされるんだと考えてはいたものの私も「ああああーーーー!!!!そういう事!?うわ〜…」と予想外でしたね。
母も真実を理解しちゃったらプールで放心状態であんな顔になるよ…。
兄も双子も、知らなくて良い真実を突き付けられて誰も幸せにならない。
2人だったから持ち堪えられたかもしれないけど……父であり兄に対してどんな感情向ければいいのか…。
兄もしんどいよね…母の事を探してたのに、知らなかったとは言えまさか自分が母に拷問してたなんてね…。
唯一、母は苦しみから解放されたのかな?でも幸せではないよね。自分の子供に過去を辿らせて真実を突き付けるってなかなかえげつないなと思いました。
強烈な展開
ルブナアザバル扮するナワルマルワンは、双子の子供に変わった遺言を残した。息子のシモンは母親としては変わっていたが普通に埋葬したいと言った。
確かに遺言とはいえ兄がいるとか突然自分が知らない事が書かれていたらとまどうよね。ましてや親として自分自身が分からなかった事を子供に押しつけるか?
評価が高かったので観たんだが、とても難解な展開だったね。でも後半に入るにつれその強烈な内容が理解出来る様になってきた。レバノンは恐い国だ。女性も強いね。
中東の複雑な事情が恐しくのしかかる
レバノン内戦の複雑さよ。
この辺りの事情をあまり知らないで見るとこの映画に対する印象や感情は異なるのでは?と思う。
非常に個人的でありながら非常に非個人的。
ありえない、非日常的な出来事の連鎖とも見えるが彼の地では非日常には思えない。
そして今カナダで生きる登場人物たち。これはオンゴーイングなことである。彼らの年齢父親母親の年齢。過去のことではなく今の、現代のことであることも。
タイトルは、原題は、火という意味のようだ。これも邦題が魅力的てはなく、鑑賞するのが遅れた。素晴らしい作品だ。
自分の生活、属性とはまるで違う視座で人生を考えること、そのような機会、演習するためにもみるべき。
灼熱の魂、まあそういうお方の一生をしるものだが、業火ということか。まず若い時の悲しい恋愛があり、宗教とか党派とかでないみんなのための平和を希求し新聞など文筆で戦おうとするもあまりに理不尽な内戦に、武装闘争しなければ理解されないし実現しないと、激烈な闘争をし激烈な獄中を闘い、それでも国外に逃れ子どもを育てた母。純粋数学などとむずかしそうな話が出てくるが最後は1+1という算数の衝撃。とにかく激烈な国であり激烈な事情があり激烈な生と死があり、地域社会と国際政治に挟み撃たれて平穏な人生なんて奇跡なんじゃないかとさえ思う。
個人的には、事情を飲み込めてないから仕方ないけど、入院中の、双子の命を救い親代わりに育てた人が、ヤラヤラ、おいで、と呼びかけたとき、双子には彼女と抱擁して欲しかった。そのくらい、物語、人の生きた歴史としては悲しく辛いし、強い母が最後に子どもたちに強さと愛をしっかり遺した。
ややこしい、響かず、
最初から複雑っぽい家族関係やら設定やらを「押し付けられてる」かんじがして入り込めなかった。
映画というものはそれぞれの設定や背景があろうけど、最初からその説明や描写が雑だったり簡素化しすぎると、その始まりから興味がついていかず、そのあとの話の展開にも興味がもてなくもなる。
個人的にはもうちょっとそのあたりの描写や相関関係、状況設定の説明や経緯が丁寧だったらよかったな、と。
登場人物も増えてきて、時代がさかのぼったり戻ったり、お母さんと娘の顔が似てて混乱したり(笑)、武装勢力だか軍だかに巻き込まれたり、いきなり宿敵のボスのとこに潜り込んで射殺したり、いきなりどこかのプールで泳ぐシーンになったり、シーン展開も雑なようで、わからんまま興味をもつ前に話が進んで見てても冷めたとこはある。
中東での宗教やら民族の争いで銃や暴力がないとなんもできん連中の後進国の地域で、残酷で悲惨なことは多々あり腹ただしくもなるところ、こういう映画でそれを描写しようにも、ただ残酷につらく描けばいいというものでもなかろうかと。
物語のよさ、深さ、どんでん返しは伝われど、そこにも入り込めず感銘も受けず。
ガイアの遺言
全くの初鑑賞でした。レバノン内戦をモデル・背景とした、ヒューマン・サスペンスドラマ。これは衝撃的でした。色んな意味で、もの凄い濃度。
ギリシャ神話で言うと、ガイアとウーラノス。神話の中では男女6人づつの子を産みますが、ここでは男女の双子。各々に、「父親と兄を探し出して手紙を渡せ」との、後に冷酷と判明する遺言が残されると言う。なぜ、そんな遺言を残したのか。
知らない方が良いこともある。
ってのを、一般社会的な立場からの進言だと思う訳で。1+1=1であることを、弟は調査の途中段階で推測し始めます。それは、明らかになって来た父親の身元情報からでは無く、なぜ、あの母が、こんな遺言を遺したのか?に対する疑問から。
結局、「ガイヤ」である母は、息子への愛と、双子の父親への期待=一緒に居ることが大事、の言葉を手紙に残していました。
神話のガイアは、天をも内包した世界そのものであった。その世界の中で、憎しみも恨みも、愛も全てを飲み込んで生きて行けと言う。それが、母の遺言。
宗教戦争の残虐性を、ナワルの生活を通して生々しい描写で見せながら、双子の出生の秘密に迫っていくというミステリーの建付けは、最高にドキドキした。
良かった。
とっても。
ヴィルヌーヴはプリズナーズ以降しか知りませんでした。
これは凄いです。文句のつけようのないくらい。
これは知るべき真相なのか?
心を閉ざしがちだったという母が亡くなった双子の姉弟。母を雇っていた男から、遺言書を読み上げられるが、そこには衝撃の真実が書かれており・・・といった物語。
遺言書に書かれていたのは、既に亡くなっているハズの父が実は生きていること、実は2人に兄がいること、そして彼らを探し出し、手紙を渡してほしいということ。
そんなこんなで、ジャンヌが母の残した謎を解明すべく、母の歩んだ人生を辿っていく。
終始、とにかく哀し気で寂しい雰囲気の物語。
本作でも、中東の悲しい現実や、宗教上のタブーなんかがガツンと描かれている。
何度見ても辛いし、腹立たしいし・・・。
少ないヒントを元に、母を知る人を知る人とかを探し、少しずつ母を知る人に近づき、探していた真相に近づくたびに明らかになる悲劇。観ていてこちらの精神も疲弊していく。ミステリー作品としても秀逸ですね。
やがて、真実を手に入れたジャンヌとシモンだったが・・・これは・・・。
辛く哀しい真実にぶち当たる映画作品はいくつも観てきたが、これはいくらなんでも。。
果たして、2人はこのことを知るべきだったのだろうか?
途中、世の中には知らない方が良い事も…なんて言う人もいたが。本当にね。
それでも母が残したメッセージには光明があったのかな?
タイトル通り、観ているこちらの心も焼き尽くされるような、哀しく、それでいて熱い作品だった。
個人的なことは政治的なこと。
やられたらやり返す。歯には歯を、目には目をの風土の中、禍福は糾える縄の如しの斜め上をいく人生をたどった女性。残された子どもにとっても、これほどの許されざる、そして許すしかないこじれた神の采配があったのかと気づかされるお話。
激しいパレスチナの内戦を肌感覚で知らない自分、いかに平和ボケしているかと思った。母の半生を辿る旅に出た娘と若い頃の母の姿が重なりすぎて、平たい顔族の自分は「え、どっちだ?」と一人でボケていたりもした(余談です)。
今後、1+1=2 という表記を見るたび、この映画を思い出すんだろうなあと思う。
ロケ地の迫力はもちろんのこと、双子たちの心象風景のようなプールの場面の静けさが印象的だった。たまたまプロット上は双子だったけど、ある意味この二人も二人で一人、その一方、一人の人間の中にもアンビバレントな人格が潜んでいるのだろう。だからこそ生育環境の影響は本当に重い、と再認識させられた。
本領発揮
なんだかよく分からない導入から、いったい何処へ連れて行かれるのか分からないまま、想像もつかないほどの残酷な運命を、双子の兄弟とともに体験するのは、あまりに劇的で、あまりに映画的な体験だった…
やはりヴィルヌーヴはこのくらいヒリヒリとした映画を撮ってこそだね。本領を発揮したのだなと、思わせられる。ヴィルヌーヴはこうでなくちゃ…
公証人
おもしろかった〜!各章がよくできている。
公文書は大事だ、ということをしつこく言ってくるので笑ってしまった。テキスト、コード、プロトコル、その結果たどりつくのは文字に刻まれた悲劇。
ギリシア悲劇みたいだ。
西洋人は英語もフランス語も通じない地ではあんなにうろたえるんだな。
公証人たちがいい味してるし、国を超えた信頼と敬意があるのも良いなと思った。
人生のエスプリを見せてくれる
人生の最後に自分の子供たちに壮絶な秘密を曝け出す。
その生きてきて秘密の人生をたどることで、子供たちに対する深い愛情を示した母親。
また人生に一度か2度しかないような偶然に、愕然としたエンディングを味わいました。
さすがフランス映画(?)の血流がミヤクミャクと流れている味わい深い作品でした。
母の過去とその足跡を探す現在とが重なり合って物語が進行していくので途中で今どっちと迷ってしまう時間があるかもしれません。
中東の嫌ミス。
メッセージ、ブレラン、デューンと続くヴィルヌーブの出世作なのでチェックです。
原作者は中東出身の劇作家の方で右派キリスト教とイスラム教の内戦がベースにあり、なかなか日本人にはすっきり腹落ちしない複雑な状況のなか悲惨な人生を送った1人の強い活動家で母親と、彼女の死後、遺書に翻弄される子供達の話。舞台でも日本で上演済みだそうです。
ズバリ日本でいうところの「嫌ミス」を中東の紛争地区ベースで組み上げた感じです。ちょっと都合良すぎる感じもしますが「嫌ミス」ですからトコトン追い込みます。欧米キリスト教圏、イスラム教のかたなら色々複雑な感情絡むのでしょうが幸か不幸か日本人なんで、宗教の話はいまいちピンとこず、どっちが悪いとか、ミスリードだとかあんまり気にしないで見たほうが「嫌ミス」を楽しめます。原題Incendiesはフランス語で炎の意味。
こんだけ面倒臭い話をよく捌いたなというか、この人ならブレラン、デューン行けるかも、、とプロデューサーに思わせる処理能力の高さと演出力。振り返るとヴィルヌーブ作品はたしかに宗教的な崇高さと説教臭ささを利用して話をリアリティ損なわず大袈裟に見せるのが上手いなと思う。レディオヘッドの音楽も効いてる。
つまり、この映画を観て彼はなるべくしてメジャーになったと納得しました。
ストーリー・テリングの巧みさが再確認できる
過去の母の物語と、その謎を追う現代の子供達の物語が並行して描かれる中で、徐々に真相が明かになっていく展開に、グイグイ引き込まれる。物語の描かれ方も、子供が事実を知ってから、母のエピソードが語られたり、その逆だったりと、画面から片時も目が離せない。
その構成の巧みさに、この監督は、つくづくストーリー・テリングの人なのだということを思い知らされる。
確かに、強引なところがあったり、ご都合主義的なところもあるのだが、衝撃の結末に持って行くまでの見せ方の上手さには、目を見張るものがある。
その一方で、そうした語り口の見事さが、最近のハリウッド大作では、あまり感じられなくなってしまったのは、残念としか言いようがない。
この監督の才能は、これぐらいの、小さな規模の映画でこそ発揮されるのではないかとも思ってしまった。
全91件中、21~40件目を表示