劇場公開日 2022年8月12日

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「愛と憎悪が同時に襲いかかる」灼熱の魂 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0愛と憎悪が同時に襲いかかる

2022年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2011年の封切時に観て以来の鑑賞だったが、やはりすごい傑作。ドゥニ・ヴィルヌーヴといえばこの作品だ。数奇な運命に導かれた憎悪と愛の物語。人はこれほど深く人を愛せるのだと描くと同時に、同じくらい深く憎悪できるということも描いている。
カナダに住む双子の姉弟が母の人生の真実を探るために、母の故郷のレバノンへ赴く。知られざる兄と父親を探せという母の遺言に従う双子は、やがて驚くべき事実に直面する。中東の現代史の複雑な背景があり、争いの絶えない地域で、悲劇が積み重ねられる。母もその渦中にいたことを知り、自らの出生にもその悲劇がつながっていることを知った双子ともに観客は衝撃を体感する。
一体、人間とはどういう野蛮な生き物なのか、同時にどれだけ慈悲深くなれるのか、この映画の結末は同時にその2つの相反することを問いかける。この映画を観ると、まさに魂が焼き尽くされる想いがする。

杉本穂高