「親分はフライを取り損ねても場外ホームランをキャッチする。」ポテチ collectibleさんの映画レビュー(感想・評価)
親分はフライを取り損ねても場外ホームランをキャッチする。
映画タイトルとなった部分のシーンだけ切り取って書くと、塩味とコンソメ味のポテチを自分と彼女の分と、と男が買ってくる。買いに行く前に女が「私コンソメ味ね」って言っていたが、間違えて塩味のほうを渡してまい、男はコンソメ味を食い出す。女も気づかずに塩味をパリパリ。パリパリ..パリパリ(何故パッケージで気づかないのだ...気付くよ普通)
「これコンソメじゃない!?...まって..でも、これも美味しくて、こっちの塩味の方が良かったかも」といって、取り替えないでそのまま食べ続けると言い出す。嬉しそうに食べてる。
男はそれを見て何故か号泣する。
...涙の理由はネタバレになるので、するけれど、塩味のポテトチップスに自分を重ねてしまったということなんだな。
本当はコンソメ食べたかったのを知っている。塩味も、こっちもほんと美味しいと言って食べ続ける彼女に、自分の母ちゃんの姿を重ねてしまう。
真実を母ちゃんに告げた時に、母ちゃんが自分に向けて言いそうな台詞を彼女が言ってるから。
この母ちゃんがほんと良い母ちゃんで、映画を通して観てから、もっかいポテチのシーンだけを見直すと、なんともいえないような気持ちになってしまう。この女性キャラクター2名の存在は非常に大きい。話は単純なんだが。
ポテトチップスを食う場面をもう一回見直せるなら、飛び降り自殺しようとする若葉をキャッチしようとする中村親分(監督)の後ろを通り過ぎていく女性が竹内結子である事も確認してみよう。
尾崎ってダレ?っていうやり取りあるんだけど、ほんとこれ日常生活でもあって、大谷翔平やイチロー級だと誰でも知っているけれど、そのチーム内での名プレイヤーみたいなのはファンの間では知られてても、野球見ない人は全くといっていいほど知らない。
そしてホームランの凄さもわからない。
若葉のセリフがまさしく野球全くわからんやつの言う、それで、「ホームランってさ、ただ打球が遠くへ飛んだってだけでしょ」
コレ。
どれだけ素晴らしいものであってもその価値を興味のない奴に説明する事はとてつもなく難しいということ。
ホームランを打つ為に日々練習する選手。
かっ飛ばすのをみたい観客。
打順やバッターボックスに入る選手を考える監督(考えてない)。裏で操る黒澤。
母ちゃんに尾崎のホームランを見せたい今村。
まさか自分の息子とは知らない母ちゃん。
全てを知る若葉。その時発せられる「そんなもんじゃねぇだろ」ホームランで誰か救われるのかのアンサーがこの台詞に込められる。
ホームランへの期待の高め方が凄い脚本。少しずつ思いを集めていくかのようなのよ。
もしかして野球見ない人にその価値を教える為に書いたんかい?というくらいエネルギーの高まりがある。
ここにくるまでに幾つものホームランへの言及があったし。
エンドロールに流れる斉藤和義の歌声。
映画の為の書き下ろしの曲で
「うれしそうなあなたを見ていたら僕は何も言えなかった」
これで良かったんだ。
原作知らない人や、このタイトルでどんな内容なの?みたいな人には、短くてあっという間に終わるハートフルコメディだからとにかく観ようよ。と言いたい。そして監督が好きな人は出てきただけで笑おう、出てきた瞬間に爆笑しました。