夢売るふたりのレビュー・感想・評価
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嫁Haaaan?
繁盛している小料理屋。ほぼ満席。夫婦二人できりもりしている。とても二人ではまかないきれないと思う。マスター@だんだんさんでもムリだろう。ヤキトリの火がおしながきに引火。消火しようとして油ナベをひっくり返してまさに火に油を注ぎ店は全焼。それが物語のはじまり。ふとした夫の浮気。妻は怒り心頭。でも、簡単に金が手に入ると分かり、夢や希望のない女(ひと)へ小さな夢を与えて金を頂戴する詐欺稼業へ。夫はせっせとまじめに女をだまし続けるが、徐々に疲弊する。そして、これは浮気に対する妻の腹いせと理解する。腹いせよりも復讐に近いかもしれない。妻のオナニーは?夫婦のセックスは?サギる相手に奉仕するため夫婦のは控えたのか?妻は子どもができない体なのか?夫は子どもが欲しくて子持ち女にはしったのか?夫の父親との会話はなんだったのか?分からないことが多い。観客に親切すぎるより考えさせる方がいいと思うが、今作は分からなすぎ。監督の今までの作品は分からないながらもなんとなく分かったような気にしてくれたが、今作は最後まで分からなかった。でも、監督はいまや数少ないオリジナルシナリオ作家だから、これからもオリジナルにこだわって勝負してほしい。
良質な小説のよう…
色んな意味で(?!)、良質な中篇小説を読んだような印象が残った。映像よりも、心にぐさりとくる強烈な台詞が次々とでてくるし…。
もちろん、『風の中の牝鷄』のような階段落ちのシーンとか、『ヒア アフター』のマット・デイモンみたいにフォークリフトを運転する場面とか、過去の映画の記憶を思い出させてくれるところもぽつぽつあって、その時は映画らしさを感じるのだが。
見応えどっぷり。
コワくて可笑しい悲喜こもごも祭り。
孤独の切なさと、挫けないタフに溢れ、
修羅場の人生を生きて強くなる人間への応援讃歌。
奥深~いヒューマンドラマを堪能。
激しい感情をこめた内面の発露、
息を呑む松たか子の表情変化の数々がスゴい!
いい映画でした
結婚詐欺の映画なんて非常に安っぽいものになるのではないかと恐る恐る見に行ったら、とても繊細に表現された世界で人々が生きている人が描かれていた。阿部定男さんが大変な熱演だった。男女の複雑な思いが含みたっぷりに描かれていて厚みのある映画だった。
雇われ店長とはいえ、夫婦で居酒屋を切り盛りしているならそこで頑張ればいいではないかと思わずにはいられなかった。しかし、それでは満足できない人間としての業も感じさせる映画だった。
予想外に良かった
結婚詐欺の映画なんてなんか湿っぽくてどうかなぁ…と思いながらも西川美和さんと阿部サダヲさんに魅かれて観に行きました。
前半、結構笑えます。
阿部サダヲが電話で女の人に別れ話を告げる横で松たか子がせっせとセリフを書いて渡しているシーンがあったり、お金も後々返すつもりでいる二人には罪の意識がないまま犯罪が繰り返されます。
しかし、中盤から後半は、だます女の人の層も変わり、一気にシリアスな展開に変わっていきます。かかあ天下だった松たか子と阿部サダヲの関係にも大きな変化が生じます。
また、後半の展開から、あぁきっとこの夫婦は本当は子供も欲しかったんじゃないのかな…とか思わされます。でも、もう戻れない。取り返しがつかないところまできてしまっている。
欲を言えば、結婚詐欺をする前の夫婦生活を1カット描いてほしかった。たとえば、「子供がほしい」と甘える阿部サダヲに「今はまだ人を雇う余裕はなかと。あと1年はこのままでいこ」と避妊具を見せて諭す松たか子。
夢みがちな男に現実的な女。
私の好きなシーンは新しい店の設計図を胸に抱えて全速力で走る松たか子の腕からバラバラと設計図がこぼれおちてゆき、最後には1枚も残らないシーン。とてもせつないです。
松たか子さんは、大女優さんでありながら本当にすごい、こんなシーンも必要ならやってのけるんだ、と驚かされるシーンもいくつかあります。
阿部サダヲさんも結婚詐欺師でありながら、女の人と関わっていく中で交わす言葉に嘘が感じられない。さながら光源氏。
何より、主演が松たか子さんと阿部サダヲさんだから、こんなエグイことをテーマにしていても、後味が悪くないんだろうなと思いました。
監督も脚本も俳優陣も本当にすごい映画です。だまされたと思って観て下さい!
夢を売り、金を取り、愛を失う
慎ましく小料理屋を営む夫婦が居た。
突然、不注意から店が火事になり、全てを失う。
再建の為、妻は働くが、職に就けない夫は重荷に感じる。
偶然知り合いの女性と会い、抱く。その女から大金を貰う。
その事を知った妻は夫に詰め寄るが、ある考えが浮かぶ。
妻がターゲットを選び、夫が口説く。
ターゲットは輝きを失った女たち。結婚という夢を売る。
女たちは次々と落ち、懐に大金が転がり込む。
再建の為、夫は抱き、妻は苦悶する。
再建のメドが立ち始めた夢間近、二人の間は軋み始める…。
冒頭の二人には夢も愛もあった。
が、結婚という夢を売り始めてから、愛は何処に?
結婚を売る夢は妻の腹いせでしかなく、夫は罪悪感を感じ安らぎを求めるようになる。
擦れ違うモヤモヤとした心と心。
道を踏み違え、ズルズルと続く悪循環。
人生の危うさと繊細さを見事にすくい上げる西川美和監督の手腕は、現代屈指。
それを完璧に体現した松たか子と阿部サダヲも賞賛モノ。
騙される女たちも十人十色。それぞれの背景とドラマがある。
中でも江原由夏演じるウェイトリフティング選手と安藤玉恵演じる風俗嬢が出色。
夢を売り、金を取り、愛を失う。
それでもラストシーンには愛が失われていない事を信じ、希望を感じた。
女たちの見せたくない内面を同情も抱擁もしない。冷静な視点がいいところ
本作のポイントは、「普通の女性にあるえたいの知れなさ」を描きだしたところにあると思います。西川監督は松たか子の起用にあたり、「主演作の『告白』で演じた女性教師も、怖い面があったけど、もう少し生活感のある、泥臭い感情を松さんが演じるとどうなるんだろう。様々な役を演じてきているのに、まだ未知数の部分があるんじゃないかと思った」と語っています。(読売新聞2012年9月7日夕刊インタビュー記事より)
同性である西川監督ですら、女性の個性を書くのは「非常に難しい」ともらしていました。「類型的でない新しい女性を書きたいと思っても、『へっ?』って言われるので、既にある型に合わせないといけない」。だから、「今まで作られてきたヒロイン像の呪縛から逃れること」が大きな挑戦だったというのです。
その得たいの知れなさは充分に発揮されて、夫をコントロールして、平然と結婚詐欺を重ねていく、モンスターぶりを遺憾なく松たか子が表現してくれて、監督の狙い通りのこれまでに描かれたことがないヒロインが登場します。
しかし、後半からラストにかけての物語のオチの付け方には、前作の『ディア・ドクターのようなキレの良さを感じませんでした。人間の持つ不可解さを追求する余りに、不可解すぎるシーンが多く、主人公の本音をわざと見えにくくしているのです。さらに輪をかけて、登場人物の心象を語り終えずに、ばっさりカットして強引に場面展開するところや、逆に意味もなく無言のアップがあるなど、見ていてこれはどういう意味だろうという場面が数多く映し出されました。
さらに、登場する騙された女たちのその後の顛末も、掘り下げられていません。消化不良気味になったのは、少々エピソードを詰め込みすぎたのではないかと思います。今回も徹底したリサーチを基にしたというから、落とすには忍びなかったでは?217分の長めの尺と相まって、ラストの詰めに悩んだのではないかと推察しました。
もとより前作でも騙す側にもそれなりの事情を盛り込んで、騙す側にも三分の理 を説くことで問題提起してきたのが西川監督の手法であったはずです。
今回のテーマが、『夢売る』ことであれば、もっと騙す方に義を持たせてやり、騙された側がそれでも満足していたという前作同様の結論に導くべきでは?
ラスト近くに普通に弁護士が登場して、依頼人が騙した側を責め立てるようになってしまうのは、幕引きとしては余りに普通になってしまいました。
だから終わり方も、ごく普通の終わり方に幕切れしたことが残念です。
元々は是枝監督の発案だった本作。ゴンチチ風のサントラや、場面と場面の間の撮り方など随所に是枝監督風の場面が散りばめています。
穿った見方をすれば、西川監督にとって主演級がキャストされた大作で、それぞれの出演シーンに気遣いしなければならず、また企画アイディアを出してくれた業界の恩人である是枝監督のアドバイスを無視できず、いろいろ気遣いをしなければいけなかったところが、本作の微妙に漂うイマイチ感り原因ではなかろうかと思うのです。
物語は、小料理屋を営んでいた里子(松たか子)と貫也(阿部サダヲ)の夫婦が、火事で全てを失ってしまうところから始まります。しかし、2人は自分たちの店を持つ夢をあきらめきれません。里子は、貫也の浮気をきっかけに結婚詐欺を思いつきます。
里子が計画し、貫也が女をだましていき、あと一息で新店にこぎ着けるとき波乱が。果たして夢を売り続けた顛末はいかにという話でした。
見どころは、まず夫の浮気を知ったとき、里子が見せる嫉妬の底知れぬ怖さ。男として、これは怖かったです。なのに次のシーンでは、喜々として夫に指令を出して、訳ありの女たちからお金を出させていくように里子は豹変します。この辺の微妙な里子の心理描写は、「ゆれる」で見せた西川監督の真骨頂というべきものでしょう。人間の心の襞を奥深くえぐるように描きだしていくのです。
不思議なのは、阿部寛なら分かるけど、なんで阿部サダヲで、ころころと次から次に女が騙されていくのかという素朴な疑問です。けれども、そんな疑問も払拭するかのように、女心を知り尽くした里子は、裏で夫を操り、自分の仮病までネタにして狙った女から確実にせしめるのでした。
巧みなのは、消してお金を請求しないこと。逆に、惚れた貫也に援助したがるカモになった女たちに、冷たく断れと指令を出すところが憎いくらいです。
かかってきた電話のそばで里子が答えるべきシナリオをかいて渡しているところは、このふたりの関係性を象徴していて、可笑しかったです。
だまされるのは結婚したい独身女性、男運の悪い風俗嬢、不倫で大金を手にした女など男社会で傷を負いながらも生きてきた女性たち。自分の今の状況や周囲の目を意識し、傷つきやすく、心と性を揺さぶられていたのです。 カモにされた女たちと貫也とが激しく絡むシーンも多く、鈴木砂羽までが風呂場で濡れ場を演じているのが意外でした。
そんな中で、貫也のこころのゆれは分かりやすいものでした。どうしても騙しているうちに情が移っていくのですね。そんな男の純情さが発揮されるのが、女として意識されないウェートリフティングの選手に見せる愛情。相手が純情だと、見かけは関係なくホロリと情をいだいてまうところは、とても分かりやすかったです。また息子を抱えたシングルマザーの女の家に居着いてしまうのも、男がいだく家族団欒への憧憬を描いて、共感してしまいました。
それに比べて、里子の心理は、もやもやしていて掴みようがありません。本当にお金が欲しいのか、他の女と交わる夫を許しているのか、女が女を心底騙せるものなのか。そして、本当に夫のことを愛しているのか?
夫が外泊を重ねるため夫婦生活の途絶えた里子は、オナニーまでして自らの衝動を抑え込むのです。しかも他の男からの誘惑に乗るそぶりをして拒絶します。
女のゆれは、里子のように繊細で小さいものなのでしょうか。その表情の微妙な変化に、監督は里子のこころの移り変わりを観客に委ねさせます。
ただ食い入るように里子の表情を凝視続けていても、ますます彼女の本心が見えなくなりました。
そんな得体の知れなさこそ、監督の狙った術中なのかも、しれません。
ラストも、そこまでして!とため息が出るほどの変わりよう。ホント人間の不可解さを思い知らされました。西川監督は、女たちの見せたくない内面をあからさまに描いたのではないでしょうか。同情も抱擁もしない。冷静な視点がいいところ。自身が未婚であることから、冷徹な観察者として徹底できたのかも(^^ゞ
美人なのに、もったいない!
心をえぐられ、人を見つめる優しさに包まれました
苦くて、切ない、そして人を愛する気持ち・・・
人間をまっすぐ見つめる西川監督の目が、
迷いながら歩いている人の姿を、心情を
飾らずに描いている映像が優しくも感じ、
心揺さぶられました。
俳優さんの演技も素晴らしいです。
松たか子は聖域か。
西川美和が監督を務めているので、迷うことなく、観に行きました。良くできた脚本でした。西川美和本人が自身で小説化すれば、芥川賞を取れるでしょう。登場人物が多いのが難で、途中で判らなくなるところがありました。特に阿部サダヲの毒牙に引っかかっていく女性たちがそうです。ちょっと、多すぎるような気がしました。しかし、一番、気になったのは、ずっと、安全な場所に居続けた松たか子です。夫役の阿部サダヲが身を粉にして奮闘しているのに、松たか子はいつも安全な場所にいます。ちょっと、狂気に襲われる場面があるくらいで、最後も何事もなかったかのように物語は終わります。裸になれ、とは言いません、でも、松たか子には、半狂乱になったり、殴り合ったりする演技を求めてはいけないのでしょうか。この映画には松たか子に対する西川監督の遠慮が看て取れます。最後の場面はちょっと、陳腐でしたが、全体的にはいい映画でした。これからが楽しみな監督です。
すごいけど・・・
試写会で見てきました。
役者の皆さんの演技はすごい。
迫力がある。
はじめのお店での夫婦のシーンは、とても好き。
でも進むにつれて、良く分からない。
良く分からないぐらい夫婦、恋人、愛人の形はあるのだということなのかもしれない。
所々笑えるシーンがあったので、なんとか最後まで見れました。
私には肌の合わない作品でした。
愛情表現
全ては里子の「愛」なんだよね。
言ってしまえば「腹いせ」。
最初の浮気がどうしても我慢ならなかったんだね。
亭主に詐欺師としての仕事を強いるのはまさに腹いせだったのだと思う。
そんなに我慢ならないことをされても別れようとは思わない。思えない。
ダメ亭主でも愛してるんだよね。
それに、あの浮気は「魔が差した」のだということも頭では理解できる。
でも、感情が許せない。割り切れない。
そんな自分に苛ついて、さらに腹いせに走る。
一方で、亭主がターゲットの女に逢っている時間、自分は苦悶する。
切ない悪循環だよ。
大きくて強い愛は両刃の剣か。
生きるって
生きていくって楽じゃない。何をするにも楽じゃない。だから何かを求めてる。誰もが何かを求めてる。この作品の登場人物達が求めているものを共有しようとした時、自分に声を掛けたくなった。「まだまだ生きるぞ!」って。
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