劇場公開日 2012年9月8日

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「緻密なシナリオと名演で観せる人間賛歌の作品。劇としても男と女の役割が入れ替わっていく妙が素晴らしい。」夢売るふたり チワワさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0緻密なシナリオと名演で観せる人間賛歌の作品。劇としても男と女の役割が入れ替わっていく妙が素晴らしい。

2021年11月7日
iPhoneアプリから投稿

今回は夫婦バージョン。海外ではどうだかわからないが、日本では大抵の場合、男より女の方が仕事ができる。たいして努力もするつもりもないのに、大きな夢を語る男とそれをニコニコしながら聞いてあげている女。好きな女の子に自分を大きく見せたい、幸せにしたい、という気持ちに嘘はなく、微笑ましい。そんな口だけ男に一生懸命尽くす、できる女、里子。好きな男の話を全部真に受ける。そのまま里子だけを頼っていけば何も起きず二人は幸せになれるのだけど、これまた男の愛故の焦りと偶然が物語を動かす。二人の愛は深まるのか遠ざかるのか。
里子は聞くだけ女子ではなく、脇役=番頭さん=キャッチャーもできるし、主役=社長=ピッチャーもできる二刀流だ。しかし本質は変わらず一途な愛があり、一度決めた相手を裏切ることはしない。相手の夢を一緒に叶えることが自分の夢でもある。終盤ダメ営業マンを叱りつけるできる女社長となっても里子は最初の里子のままだ。かなり誇張はされているが日本の至るところで繰り広げられている男女の愛やすれ違いを、時にはドタバタ劇で面白く、時には哲学的なアプローチで見せていく。誰もがもがきながら一生懸命生きているだけで本当に悪い奴が出てこない。そんな夫婦愛に亀裂が走るが、まるで空から大量のカエルを降らせるような奇跡で、これまでの里子の行動を肯定し、悪い結末に向かうことを止める。奇跡は当然ハッピーエンドを予感させるので救われた気持ちになれる。終わらせ方は世間的に受け入れられる方向で、自分的には不満。でもそこはどうでもいいところ。全ての描写に意味を持たせすぎているところは、面白くもあり、見終わって頭が疲れる。ジェットコースター的純文学作品?なのかな。

チワワ