劇場公開日 2012年10月13日

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ミステリーズ 運命のリスボン : 映画評論・批評

2012年10月2日更新

2012年10月13日よりシネスイッチ銀座ほかにてロードショー

映像美のそこここに奇妙が蠢いている波瀾万丈のメロドラマ

昨年、70歳で逝ったラウル・ルイス。日本では作家の映画やカルト映画の花が咲いた80年代「ロック公国ジャゾン3世」がいきなり公開されたものの、その後は晩年の「見出された時 『失われた時を求めて』より」「クリムト」を除くと映画祭や特集上映等の限られた機会での紹介にとどまってきた。これはいかにも惜し過ぎる。死の間際まで新作の準備を進めていたという多作の鬼才の端正なのに突飛で奇っ怪、けれども決して小難しかったりはしない世界は一度、体験してみるともっと知りたい、はまりたいと希求させる妖しい磁力に満ちているのだから。

その意味で19世紀ポルトガルの大河小説を原作とする本作はルイス界への扉を開ける絶好の機会といっていい。

両親を知らず苗字もなく修道院で育った少年。彼の出生の秘密を握る庇護者の神父。その彼にもあるいくつかの秘密――。時代も国境も超えて繋がる人の数奇な運命が波瀾万丈のメロドラマを編み上げる。許されぬ恋、親子の確執、兄弟のそれ、不義密通、決闘、スキャンダル。めぐりめぐってマトリョーシュカ人形状に出てくる出てくる秘密と謎、回想に回想がつらなって誰が誰やら――の4時間半がいっきに飛び去っていく。筋の起伏にのみ込まれつつふと気づくと長まわしのキャメラの優雅な動きの中、幽かに揺れたりゆがんだりしているフレームの周辺部、微妙に遠近が誇張された人物配置と、映像美のそこここに奇妙がぼこぼこと蠢(うごめ)いている。そんな実験性。その妙味。筋を先取りするように登場してくる少年の紙製の人形劇に、はたまた彼の死の床の夢に総てを収斂させるのかと、答えの出ない謎を仕掛けてほくそ笑む鬼才、そのスリリングな挑発に乗ってみたい。

川口敦子

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