ワールド・ウォー Zのレビュー・感想・評価
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一流役者を使ったB級映画
原題:「WORLD WAR Z]
原作:2006年に出版された、マックス ブルックスによる同名の小説
監督:マーク フォースター
キャスト
ゲーリー レーン: ブラッド ピット
妻、カレンレーン: ミレイユ イーノス
スピーク隊長 : ジェームス バッジデール
ネイビーSEALS隊長: マシュー フォックス
イスラエル女兵士 : ルーシー アハリシュ
ブラッ ドピットの映画製作会社、プランBエンタテ―メント製作
日本では8月10日に公開予定
映画の話から逸れるが、ブラッド ピットのパートナー、37歳のアンジェリーナ ジョリーが乳癌予防のために両乳房切除と乳房再建手術をしたと、発表をした。彼女のようなビッグネームの女性が、このような形で勇気ある発言をしたことによって、人々に乳癌予防や啓蒙をし、乳癌患者に勇気を与えることになった。とても立派なことだと思う。日本は先進国の中で、最も乳癌罹患率の低い国だが、アメリカでは昨年1年で、23万人の人が新たに乳癌の診断を宣告され、4万人が亡くなった。乳癌は、癌のなかで最も遺伝性が証明されており、遺伝子に「BRCA1」と「BRCA2」を持つ人は、乳癌に罹患する確率が87%。2等身以内の親族に50歳以下で乳癌に懸った人が多い場合は、確率はもっと高くなる。BRCA遺伝子を持つ人は、一般の人の10-19倍 乳癌に罹りやすい。私の仲の良い看護婦も BRCAを持っていて、いつかは必ず乳癌を発病すると分かっているので、結婚も子作りもしないと、決意している。でも、そんな人ほど、子供好きで、どこに行っても子供から好かれて、まつわりつかれたりしていて、見ていて悲しくなる。
このような人の場合、両乳房切除によって、乳癌罹患率を5%に下げることができる。欧米では、すでにたくさんの人が、アンジェリーナのように、切除にあたって、両乳頭も 乳輪も、乳房の皮膚も温存したまま切除して、乳房再建をしている。乳房のわきに切れ目が入るが、術創は前から見えないし、胸の開いた服を着ることもできる。アンジェリーナは、「子供たちの為に長く生きたい」と、手術を決断したそうだが、本当に勇気ある決断と、勇気ある発表だった。こういう人を、心から応援したいと思う。
さて、映画だが、ブラッド ピット主演、製作のゾンビ映画。
ストーリーは
国連の調査官、ゲイリー レーンには妻と二人の小学生の女の子が居る。ある朝、フィラデルフィアの自宅から、いつものように車で子供たちを学校に送る途中で、ひどい渋滞に巻き込まれる。車ごと身動きできなくなっていると、突然、人々が車を捨てて逃げ出し始める。凶暴なゾンビ集団が襲ってきて、次々と車が破壊され、人々が噛みつかれる。ゾンビに噛まれた人は いったん死んで12秒すると生き返り、凶暴なゾンビとなって人を襲い始める。ゲイリーは機転をきかせてトラックで 家族を連れて逃亡するが、途中、軍のヘリコプターに拾われて、海上に停泊する米軍の航空母艦に収容される。アメリカ大統領は、すでにゾンビに襲われて死亡、米国全土は ほぼゾンビに占領されていた。逃げ切ることができた人だけが海に浮かんだ航空母艦に居住する状態になった。
国連の特殊機関で働いているゲイリーは、軍の司令官から、ゾンビを放逐するために原因を探り対策をたてるように命令される。ゾンビは ウィルスが原因で、咬み傷から感染して、発病するらしい。最初にゾンビが発生した土地に行きゾンビに対抗できるワクチンを探さなければならない。ゲイリーは、まず海軍SEALSの担当官と一緒に、韓国に飛ぶ。どこに行っても、ゾンビが待ち構えている。危険に身をさらしながら、わかったことは、北朝鮮に武器を売り込もうとして入国した元CIAのアメリカ人が最初にゾンビに接触したことだった。より詳しい情報を得るために、ゲイリーは、次にエルサレムに飛ぶ。エルサレムでは、高いコンクリートの壁に囲まれた安全圏が建設されており、様々な宗教や異なる国の人々が収容されていた。しかし、安全圏の中の人々が一斉にお祈りを上げ始めると、急に安全圏外にいる何万人ものゾンビが凶暴化して、壁を破り安全圏になだれ込んできた。ゲイリーは イスラエル女兵士ひとりだけを連れて辛くも脱出、しかし 安全なはずの飛行機にも、新たにゾンビになった乗客がいて、みるみるうちにコックピット以外は、すべてゾンビに支配されてしまう。ゲイリーは機長とともに、ゾンビに破壊された飛行機を不時着させる。しかし、失敗して航空機は爆発する。
生き残ったゲイリーとイスラエル女兵士は、怪我をかばい合いながら、WHOにたどり着く。WHOの建物も、ゾンビに占領されており、ほんの数人の研究者が、一室に閉じ込められていた。WHOの生き残り研究者の話から、研究者が開発したゾンビウィルスを不活性化するワクチンが、開発中であることを ゲイリーは知らされる。しかし、ワクチンは 安全圏である部屋からは、遠い冷蔵庫に保管してある。どんなことをしても、ワクチンを保管庫から出して、ゾンビウィルスに対する免疫を作らないと人類は生存できない。このままでは、人類は滅亡してしまう。ゲイリーは、意を決して保管庫に向かう。しかし、凶暴なゾンビに囲まれてしまって、、、ゲイリーは、、、。
というお話。
世界中にゾンビウィルスが広がってしまって、非感染のまともな人間がほんのわずかしか居なくなってしまう。咬み傷によって感染し発病したゾンビは 凶暴化してあっという間に人々を襲ってゾンビウィルスをまき散らす。救命方法はワクチンだけ、という設定でストーリーが進行していって、ハラハラするが、どんどん人が死んでいく中、ブラッド ピットだけは、絶対死なない。さすがだ。
最後のほうになって、生き残ってワクチンを打った人々が、反撃に出て、何十万人、何百万人というゾンビをフィットボールスタジアムに追い込んでミサイルか原爆か、水爆化、化学兵器かなんかで ドキューンと皆殺しにするシーンがある。強力マシーンでバリバリとゾンビを殺すシーンも延々と続く。とても暴力的な映画だ。ゾンビは強力兵器で、完全に破壊殺害しないとね、、、。と、しかし、ゾンビはふつうの人間だった人たちでしょう。昨日まで、自分たちの親であり、兄弟だった人たちでしょう。それを球場に追い込んで一人残らず皆殺しにするって、どうなんだ。なんてことをするんだろう。仮に凶暴で襲ってくるにしても、ウィルスが原因で凶暴化した人を こんな風に処分してしまって良いのだろうか。見ていて、つらくなる。
余りに科学的でない、非現実的なストーリーなので 批判するよりもあきれてしまう。疑問点。
1) 病原菌が同じでも、人はそれぞれが異なるように、症状も異なって現れる。この映画のように咬まれて12秒後に 同じパターンで誰もが発病して凶暴化するという設定には無理がある。
2) ゾンビに手を噛まれたイスラエルの女兵士を ブラッド ピットは その場で手を叩き切って命を救うが、咬まれた傷口から 感染ウィルスが血液を通して心臓や脳に行くのに1秒かからない。手を切り落とす前に すでに感染しているはずなので救えるとは思えない。また手を叩き切って、動脈を切っているから、映画でピットがちょいちょいと包帯したくらいでは、止血できると思えない。
3) これほど情報化が進んだ社会で、世界中一つのウィルスで同時多発的に、ある日、突然社会がゾンビに乗っ取られることはあり得ない。地球には時差もあるんだし、、。映画ではいつものように家族が学校に行く途中ゾンビが降ってわいたように世界を制覇してしまい、その前に何の情報も前兆もない。これはあり得ない。
4) ひとりが10人の人を噛んだとしても 世界中には68億人の人がいる。突然ゾンビが世界を乗っ取ることは、できなくて、もっと時間をかけてゆっくり感染、発病、波及していくはず。
似たような「宇宙戦争」原題「WAR OF THE WORLD」という2005年のトム クルーズ主演、スティブン スピルバーグ監督の映画もあった。あれも、これも十分馬鹿っぽかった、B級映画だった。トム クルーズが、走らせればトムよりは 速く走れそうな7歳くらいの ダコダ ファニングをしっかり抱いて遅くなった足で エイリアンから逃げ惑う姿には笑ったが、今回も、ピットが大きな娘を抱いて逃げ回る。子供は抱かないで、走らせなさい。
この映画、ブラッドピットのゾンビ映画だから見た。これをB級恐怖映画と評するか、コミカル喜劇として笑うか迷う。
しかし49歳になったピット、いつもとてもナイスだ。家庭想いの優しくて強いお父さんの役を演じていて、実際のピットも 家でこんな立派なお父さんなのだろう、と思わせる。こんな映画でも、絶体絶命のとき「僕が戻ってこなかったら、家族を愛してるって伝えて。」などどいうシーンがあって、思わず涙を浮かべてしまう。ハリウッドが高いお金と、一流の役者を使って作ったB級映画。
まあ、だけど、ピットが出演してたくさん稼いで、そのお金がアンジェリーナ ジョリーの勇気ある手術や予後の医療に使われたり、彼らのプロジェクト、アフリカの婦女子教育に使われるのなら それはそれで良しとしよう。
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