「ガンという難病を通じて、本当の人間関係が見えてくる映画」50/50 フィフティ・フィフティ Theo5さんの映画レビュー(感想・評価)
ガンという難病を通じて、本当の人間関係が見えてくる映画
本筋に行くまでに主人公の人柄や登場人物の掘り下げをくどいくらいやる映画がそんなに好きではないのだけれど、この作品にはもうちょっとガン告知までにそれが欲しかったように思えた。
あまりにも大きなガン告知というドラスティックな出来事に結構淡々と事実を受け止めて、すぐに状況に溶け込む主人公は凄い人間が出来ているのか、現実逃避しているのかというその辺りが人物の掘り下げが薄いせいで解りづらかった。
映画の内容としてはコメディだとは言われているが、そこまで吹っ切ったコメディ要素はなく、どちらかというとヒューマンドラマの方が近い。
やはり驚くべきは主人公のガンの受け入れ方で神経質ながら淡々とした性格には尊敬を憶え、友人は良き友であるのは間違いないのだが、もし立場が主人公と逆ならば、こんなに落ち着いた映画にはなっていないだろう。
最初の彼女の存在は最初から不穏な感じがたっぷりで、やっぱり浮気している方向に行ってしまうのかと、胸糞悪さを憶えた。
「あなたには看病の辛さが解らないよ!」と逆切れするシーンはこの映画一番のコメディ要素だったに違いない。
しかしながらこの映画にはガンという重い病気を通じて、本当の人間関係が見えてくるんだという強いメッセージが感じられる。
ただただ息子を愛して止まない家族の愛に、性欲を感じなくてもただただ人として付き合える友情とじんわりと来るものがある。
セラピストの彼女も自分の汚い車を隠す気のない素直な性格はとても好感を持てて、ただのだらしない汚い女として描いていない演出はとても良かった。
ラストも安易に殺さず、けれど完全回復ではないけれど、少しでも主人公に幸あれと促すようでテーマの割には後味はそれほど悪くなく、印象に残る終わり方だった。