フェイク・クライムのレビュー・感想・評価
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テーマは旅立ち…それでも残る朝食シーンの謎
不思議な映画でした。まず、キアヌファンらしき若い&あまり若くないお姉さんと暇潰しっぽいおじさんの入り交じった不可思議な客層にびっくり。(とは言え、自分もその一人ですが…。)さらに、観終わった直後は正直「なんだこりゃ?」と思いました。「あなたはもう騙されている!」という宣伝コピーに、ある意味騙されてしまったせいかもしれません。原題は「Henry's Crime(ヘンリーの罪)」であり、邦題の「フェイク」はキアヌの前作「フェイク・シティ」に絡めただけのこと、とはよくわかっていましたが、「クライム」に引きずられてしまいました。それでも腑に落ちなさすぎるのでちょこちょこ調べてみたところ、制作開始を報じる記事等では「ロマンチック・コメディ」とされています。…そのくくりはさすがに疑問ですが、脚本が「ターミナル(脚本)」「アンヴィル!夢を諦められない男たち(監督)」のサーシャ・ガバシですから、「ヒューマン・コメディ」くらいがぴったりくるかと思います。
たぶん、この映画の軸はチェーホフの戯曲「桜の園」です。この物語の筋書きを予習しておくと、より楽しめるかと思います。…というわけで、実は「旅立ち」がテーマだったんだなあ…と、次第に晴れ晴れした気持ちになれました。夏(夏休み)や春(新生活)に似合う映画かもしれません。
それでもいまだに個人的に気になっているのは、二度も登場するキアヌの朝食シーン。メニューはいずれもスクランブル・エッグ。冒頭では「うまそうだ」と一応言いますが、いずれもフォークをさかんに動かすだけで、なかなか食べません。なぜ?
仮説A:実はスクランブル・エッグは好みではない。(となると、自分で料理したらしい二回目のつじつまが合いません。却下。)仮説B:卵より付け合わせのベーコンにこだわりがある。(二回目はベーコンの焼き方の好みを仲間に確認しています。一回目は妻に気遣い「うまそう」と言いますが、実は好みのクリスピーではなかったのかも。二回目は、嬉々として卵をベーコンに載せ、食べる準備をしているとも見えます。)仮説C:リテイクが多すぎて、卵を食べあきた。(「夢見るように眠りたい」のゆで卵みたいですが…。)…と、実は元々の脚本には朝食をめぐるエピソードがあったのでは?と勝手ににらんでいます。いかがなものでしょう? 些細なことではありますが、「朝食」はあなどれません!
Amazonプライムで無料だったので鑑賞しました。 恥ずかしながら...
中々良かった
ヘンリー(キアヌリーブス)は、平凡な生活を送っている中騙され銀行強盗の一味として捕まり仲間の口を割らず1人懲役中マックス(ジェームズカーン)に出会う、懲役中妻は強盗の一味と再婚。出所後、女優のジェリー(ベラファーミガ)と出会い出演する劇場が強盗を失敗した銀行と昔トンネルで繋がっていた事を知り、まだ服役中のマックスに強盗話を持って行く。マックス出所後、トンネル強盗の準備を進める中、ヘンリーはジェリーは恋に落ち、マックスの知恵でジェリーの相手方にヘンリーを男優化に仕立て楽屋からトンネルを掘る。淡々と進め舞台初日に銀行強盗は成功。。逃走する中ヘンリーは1人舞台に戻りジェリーと舞台ラストをアドリブで演じて終える。
ストーリーの面白さを名優が演じ最後は、男女のHappy endの舞台アドリブで終え、味のある作りで満足!!
面白かったです。
キアヌリーブスが良い雰囲気出してます。それよりもなによりもジェーム...
ヘンリーの脱力銀行強盗
銀行強盗の片棒を担がれ、自分だけ捕まってしまった男が、出所後、本当に銀行強盗を企てる…。
主人公ヘンリーに、キアヌ・リーヴス。
キアヌ主演のハラハラドキドキサスペンスかと思いきや、かなりコメディ色が強い。恋愛色もプラス。
所々脱力感も漂い、滑稽でもあるが、キアヌは人間味たっぷり。
ヘンリーが偶然知り合う舞台女優ジュリーに、ヴェラ・ファーミガ。「マイレージ、マイライフ」もそうだが、大人の女性の魅力が光る。
ヘンリーと共に銀行強盗に加担する獄中仲間マックスに、名優ジェームズ・カーン。お久々だが、その存在感、さすがコルレオーネ・ファミリーの長男!(笑)
銀行とジュリーが出演する劇場を繋ぐ禁酒法時代の秘密の地下トンネル。これを利用して計画を企てる。
犯罪映画ならではの好奇心をそそる。
が、しかし…
先にも述べた通りコメディ色が強い為、緊張感は盛り上がらない。
ヘンリーが銀行強盗を企てる動機も弱い。
ゆる〜い感じとおかしな人間模様が魅力と言えば魅力だが、ちょっと消化不良。
同じサスペンス・コメディなら、「黄金の七人」のような洒落た感じ、「おいしい生活」のような笑い、「鍵泥棒のメソッド」のようなユニークな捻りが欲しかった。
サスペンスものとして見たらダメ。これは大人のラブコメだ。
お互い誰も信用できず、騙し合いの果て、最後はヴェラ・ファーミガが本性を現し、キアヌ・リーヴス大ピンチ・・・てな印象を抱いてしまった予告篇とは趣がだいぶ違う作品だった。
ひょんなことから銀行強盗の片棒を担がされた挙句、投獄。
仮出所後、これまた、ひょんなことから同じ銀行の襲撃を思いつく。
キアヌ・リーヴス演じるヘンリー・トーンは主体性に欠けた男だ。いつも、その場の雰囲気に流されてしまう人生を歩んできた。それは、少なくとも高校生の時からずっとだということが明かされるシーンがある。
この作品は、そんな彼が、自らの意思で決断を下すときを描いた作品で、決して騙し合いの話ではない。
むしろ、宣伝されたような内容よりも、ベテランの俳優によって心の葛藤を描いた上質な人間ドラマだ。
むろん、話の主軸は銀行強盗、犯行の成否だ。
その犯行と同時進行するのが、ヘンリーと舞台女優ジュリー(ヴェラ・ファーミガ)の恋。
なかなか大成できない女優が、これが最後と懸けたのがローカル舞台での「桜の園」。
いっぽう、ヘンリーが初めて自分の意志でやりたいこととして挙げたのが銀行強盗。獄中で知り合った老人マックス(ジェームズ・カーン)からは「お前の夢はそんなものか」と言われるが、ヘンリーにとっては他人から強要されずに行動するという大きな意義をもつ。少なくとも、ヘンリーはそう信じている。
マックスは刑務所の生活が一番と言って出所したがらない反面、何事にも動じないしたたかさと機転が利く頭脳の持ち主だ。ジェームズ・カーンのすまし顔がいい。
そろそろ話の地固めがすんだところで、ここにとんでもない裏技を仕掛けてくる。
これも成り行きと言ってしまえばそれまでだが、ヘンリーが舞台の欠員を埋めるため、急遽、代替え役者としてリハーサルに参加することになる。
いくらなんでも、それは無謀だろうと思うなかれ。これには、これで、こうしたいワケがあるのだ。無理を承知のゴリ押しだ。
ヘンリーとジュリーの関係が、チエホフの戯曲「桜の園」のヒロイン、ラネーフスカヤと、結果的に彼女の大切なものをカネで奪ってしまうことになる農夫あがりの商人ロパーヒンのふたりにぴたりと重なるのだ。
ことが成功したらすぐさま町を捨てるつもりのヘンリーだが、舞台の初日を迎え、ヘンリーを失うことは即ちジュリーの舞台が台無しになることを意味する。
そのときが迫るにつれ、ふたりの心の葛藤がそのままリハーサルの演技に真実味を増していくというのが面白いところだ。
とどのつまりが、この作品を犯罪もののサスペンス映画だと思って見たら大間違いということだ。
むしろラブ・ロマンスもの、それもちょっとラブコメ寄りと思って見たほうが、いろいろなところで合点がいく。
ラスト、ふたりの見つめ合いは、まさにふたりの芸達者な間合いに不覚にも涙が。
ヴェラ・ファーミガの横顔が綺麗だ。
ムチャな設定と展開も、この一瞬で帳消しにしてくれる。
品がいい
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