劇場公開日 2011年9月24日

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アンダーグラウンド(1995) : 映画評論・批評

2011年9月20日更新

2011年9月24日よりシアターN渋谷ほかにてロードショー

コントロール不能な力を全力で謳い上げる、哀しくも愛おしいファンタジー

1995年製作の映画である。戦後50年というタイムスパンと、90年代に入ってのユーゴスラビアの内紛の顕在化が、この壮大かつ愛らしい映画の原動力となる。つまり前世紀初めから常にくすぶり続け、時に大惨事を演出してきたユーゴスラビアにおける紛争の歴史が、あくまでもバカバカしく騒がしい愛と悲しみあふれるファンタジーとして、大声で語られていくわけである。

タイトルの「アンダーグラウンド」はこの映画にとって何かの比喩ではない。まさに現実の地下世界が出現する。戦時中に地下に閉じ込められ、地上世界の動きを知らされぬまま長き年月を送ってしまった人々がいる。彼らを騙した男がいる。それらを知りながらただひたすら自分を捨てていくしかなかった女がいる。その女を求め続ける男がいる。それぞれが何かを求め、裏切り裏切られ命をかけ何かを失い何かを得る。そのダイナミックなエネルギーが、地下世界に充満する。

しかしいつも誰かがそれをコントロールする。地下と地上とに境界を作り、そのダイナミズムを失わせる。約170分という時間をかけて戦時中から半世紀のユーゴスラビア紛争と分裂の歴史を描くこの映画は、私たちの中にあるコントロール不能な力を全力で謳い上げる。いつ誰がどこに境界線を作ろうとも、私たちにはそれを突き破る力があるのだと。

樋口泰人

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