ベニスに死すのレビュー・感想・評価
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天才作曲家の老いと美への憧憬
どちらかというと、テンポの遅い映画は苦手。 これまでもこの映画を何回か、見始めたけれども最後まで見ることができたのは初か。 クラシック音楽大好き人間だからの興味ゆえ、グスタフマーラーへの関心もあった。 映画の主な題材は、老いと若さ(美少年への愛)、音楽芸術、観光都市ヴェニスの怪しさなどなどだけれども、今一つ、気持ちが映画について行けなかった。 貴族出身のヴィスコンティらしく、映像はいつも美しい。 マーラーなどの音楽が映画と良くマッチングしている。
「永遠の美」には届かない
主人公は作曲家だ。
彼のモットーは「永遠の美」「理想的な美」「完全で純粋なもの」。
人々の振る舞い,さりげない所作にも気品を要求する。
しかし大衆は彼の芸術を理解せず,挫折する。
回想に登場する友人もまた,主人公に対抗するようにして「俗」の考え方をぶつける。
そんな彼がベニスを訪れて出会ったのが,完璧な美を備える少年タージオ。
美しく,また所作からも上流階級の教育が見て取れる。
主人公はタージオに近づこうとベニスの街を彷徨うが,触れることも叶わない。
やがて主人公は伝染病に罹患。化粧が醜く崩れていくなか,夕日に向かって進んでいくタージオの背中を眺めながら砂浜で息絶える。
*
完全な美を目指す主人公にとって,タージオはまさに理想を具現化した存在。しかしいざ彼を目の前にして,自分自身こそが醜い存在であり,理想の美は自分には得難いものなのだと悟る。夕日に向かっていくタージオは,主人公にとっての理想が遠ざかっていくことを表している。主人公の目指した芸術性は,彼の死とともに敗北を迎える。その様を2時間かけてじっくりと丁寧に描写した。夕焼けのラストへ向かって、この映画はマーラーの交響曲とともに絶頂を迎える。
*
本作において,笑いというのは下等で俗で下品なものとして描かれた。
笑う者は俗であり,上品な人間は笑わない。
主人公も無表情を貫くが,自分の死を悟ってようやく笑う。
それは主人公が俗へと転落した瞬間であり,またそのことを自覚した自らへの嘲笑でもあった。
過去に影を持つ老作曲家が、避暑地ベニスで尼神渚似の美少年に心奪われ...
過去に影を持つ老作曲家が、避暑地ベニスで尼神渚似の美少年に心奪われる話。キッショー!
これは老いへのむなしき抵抗ということか。ダッセー!
折しもベニスではコレラ蔓延寸前。おっさんは逝った。もういいよねー、題名で壮大なネタバレだし(笑)
こういう系の映画はお子ちゃま脳にはやや退屈でした。
何が起きているのか分かり辛い
総合50点 ( ストーリー:50点|キャスト:75点|演出:40点|ビジュアル:70点|音楽:75点 )
「苺は危険、この暑さだから」
この前振りから始まる伏線を見逃すと彼がなぜ体調を崩したのかがわからない。突然始まる消毒に疫病の報告があるが、そもそも彼が体調をそんなに崩しているとも思えなかった。コレラということだが、それらしい症状が主人公からは感じられない。まして死んだとは思わず、ただ寝ているだけだと思った。
タッジオのことにしてもそうで、主人公が彼に対して恋愛感情や性欲をもっているなんてことはわからなかった。
このように物事をはっきりさせずに淡々と外側から展開を映すだけの演出では、一体何が起きているのか伝わってこない。だから物語がさっぱりわからない。若いころに初めて観たときは全く理解できなかった。結局後でネットで調べてその内容を理解することになる。
原作は未読だが、調べてみると言いたいことはなんとなくわかる。年齢を重ねて若さと健康をなくし、芸術を追及して仕事で行き詰まり、そんなときに保養地で会った純粋に若さを楽しむ美少年は自分が無くしたものを全て持っていた。それに対する憧憬と美に引き寄せられる自分。特に私も年齢を重ねてくると理解できる部分が昔よりも増えていた。
原作を知っている人はいいだろう。だが内容を知らず調べもせずに映画を観ても何が起きているのかさっぱりわからないしただ退屈。何が起きているのか主人公の心の内を物語としてわからせなかった演出は、芸術性に傾斜しすぎているように感じる。
美しく老いる人はまずいない
年を取ったせいか すんなりと理解できる
ようになってしまった!
死への誘惑と 生への惜別の思い
成し遂げられなかった様々な夢…
ふと 若いおねーちゃんを追いかけている
おっさんを理解した様な気にもなった
ヴィスコンティは自分の中の「老境」を理解し 冷酷に映画にしたのだ
ダークボガードは頑張ったが これでよかったのだろうか…
監督の音楽の使い方(解釈)は 本当に素晴らしい
冒頭の画面を見て どれだけの旅人がベニスへと 誘われたことだろう
死への旅路の話なのに!
タジオが全て
高校生のときに初めて見て、もう何度も見た映画。
ビョルンの美しさの前には他の全ての物はどうでもよく感じる。
ビョルンのレコードを探し、明治チョコのCM映像を探した。
久しぶりにまた見たくなった。
芸術作品
ひたすら美少年をつけ回すオッサンの話……
と言いたいけれど、なぜかそれが美しくて見とれてしまう。オッサンにとって美少年は一種の芸術であり、美の追求や若さへの憧れとして見ている。決してショタコンではない。(たぶん)
疫病の流行に恐怖しつつも、結局は国から離れることなく死を選んだ。もし、美少年が少しでも嫌な顔をしたり、あからさまに不快をあらわにしていたら、オッサンは帰っていたかもしれない。そして疫病にかかることなく、しばらくは普通に生きていたはずだ。
しかし何のつもりなのか美少年は、いつだって優しく微笑んでオッサンを誘惑するのだ。
あざとい。美とは時として凶器である。
何度も号泣しました。
音楽、景色、世界観、ストーリー、
そしてタージオの美貌。
全てがあまりにも悲しく美しく、
涙が止まりませんでした。
初めて観た当時高1だった私は、
「絶対、このDVDが欲しい!」と
強く思いましたが、財布の中身は
僅か五百円。
親の財布からお金を盗んでDVDを
買いに行った事を覚えています。
今でも、私の中で「ベニスに死す」は
一番好きな映画です。
こんなに素晴らしい作品に出逢えて
本当に幸せだと感じます。
アクション映画などスピード感に
溢れる作品が好きな方には
お勧めしませんが、
本当の美しさに触れたい。
映画を観て思いきり泣きたいという
方には是非見ていただきたい作品です。
美しい恐怖
悪く言えば
美少年に惚れこんでしまったおじいちゃんが130分間もじもじ彼を追いかけまわして挙げ句死んでしまうという色んな意味ですごい映画。
今の時代(じゃなくても?)に見ようものなら、通報されるんじゃないかとか、少年に毛嫌いされるんじゃないかとか、少年の母上に嫌われるんじゃないかとか、イロイロ考えてしまう。
だがこの映画でビックリなのが、以上のような事がないどころが、少年とおじいちゃんが会話をする事すらない。セリフも少なく、ただベニスで過ごすタージヒ少年の家族と主人公が淡々と写されていく。
追いかける過程の中で何度も何度も死の影がちらつく。一見、不自然なほどに話の中に伝染病の話題が出てくる。後半だんだんと背筋にくるような印象が強くなってくる。知らず知らずの間に主人公は病にかかっている。そして題の通り、ベニスで死んでしまう事に。
少年は微笑みかける。
タージヒ少年の美しさはもうそれはそれははんぱじゃない。妖怪じゃないかと思ってしまうほど。主人公は一喜一憂しながら少年を追いかける。この恋というのがまた。同性愛的でない。相手が少年なのと、妖怪かと思うほどに美しいからなおさらそう思う。女でないからその感情に性的な感じが漂わず(あくまで私の意見だが)とても神聖な領域の話にみえてくる。実際にタージヒ少年は天使とか悪魔のたぐいにも見えてしまった。彼の微笑みが主人公を死へ導いた。老いという苦しみを与えた。考えるほど奥が深く、深く深く色んな意味が詰まっている映画なんだろうと思った。
印象的だったシーン。
主人公がベニスに留まる事を決め、ボートにのり、笑顔が満開!もらい笑いしてしまった。結局苦しい死を迎えるわけだけど、死ぬ前にこんなに本気の恋が出来た事はとても幸せだったのかもしれない。
美への純粋な愛
深くて美しい映画だった。
美しいものを見た時、人は性別関係なく惹かれてしまうことがある。
綺麗な肌を見たら触ってみたいと思う。
いい匂いのする人がいたら近くにいたいと思う。
誰しも多かれ少なかれ、このような感情はあるはずだ。
それまでの美への価値観を覆してしまうほどの衝撃を受けた作曲家グスタフは、
まるで初恋をした乙女のような行動をとるほど
タジオの虜になってしまう。
この映画は単に同性愛を描いたものではない。
グスタフにとって、タジオが男であるか女であるかは関係ないだろう。
タジオがたまたま男でありながら美しすぎただけなのだ。
一人の老いた芸術家が、
若くて美しい天然の美を誇る少年に出会う。
今までの芸術に対する考えを覆され、
届かない美の象徴である少年に翻弄され苦悩し、
果ては醜い姿で死に至る。
天然の美へのどうしようもない憧れ・・・。
人間の普遍的な執着を描いた
ある種残酷な作品に仕上がっている。
タジオが女ではなく男であるとしたところに、
「美しいものへの純粋な愛」を際立たせ、
どこかミステリアスな雰囲気をこの映画にもたらしている。
しかし、グスタフのあまりに腰抜けな動作には見る度笑ってしまう。
手も足も出せず、ただただ見つめるだけ、そっと近づくだけ。
妄想までしてしまう始末。
またベニスへ戻ってくる時のどこか嬉しそうな表情。
なんて滑稽なんだろう。
グスタフは何を思い死んでいったのか。
彼の人生とは何だったのか。
タジオに出会わなければグスタフはあそこで死ぬことはなかったかもしれない。
醜態をさらすこともなかったのかもしれない。
しかし、翻弄されながらも
追い求めていた美を眺めながら死んでいった彼は
ある意味幸福だったのかもしれない・・・。
最近観たどの映画よりも叙情的で不思議な魔力を持つ作品だった。
これから何度でも観るつもりだ。
タジオの美しさについて。
まるで地上に降り立った天使。
西洋画から抜け出してきたような美少年。
とにかく、俗っぽさ、男性らしさを一切感じさせない。
白い陶器のような透き通った肌、
薄紅の頬と唇、
耽美さを増す髪型のウェーブ、
ヒョロッとした華奢な体つき、
高い腰の位置。
ビョルンは性別を超えた美しさをこの作品では誇っている。
意外と低いが何気に声もいい。
ビョルンの素材がよかったのは勿論言うまでもないが、
ここまでタジオを永遠の美少年に仕立てあげたのは
演出の力も大きいだろう。
彼が纏う衣装はどれも似合っていて美しさを際立たせるものだった。
ふとしたときのポーズも、まるでわざとらしいくらいに計算されている
(きっと、腕や足の位置を細かく指定していたのだろう)。
グスタフの視線に気付いてからは挑発的で小悪魔な感じの態度を見せるが、
これもまた彼の魅力の一つと言える。
黒目が小さく切れ長でSっぽい目つき・・・。
グスタフが思わず愛しているとつぶやいてしまうのにも納得だ。
ただでさえ美しさにノックダウンされているのに、
更に魅惑的な顔を見せられてしまっては、
「これ以上翻弄しないでくれ」という気持ちが起こってしまう。
タジオの母親も、タジオに負けず劣らずの美しさだった。
衣装も派手で優美でため息が出るほどだ。
二人が揃えばまさに負けなし。
タジオに執拗にイチャつく友人が気になった。
「まさかこの友人もタジオに惹かれている?」と思わせるほどだった。
この演出は監督が狙ってのことだったのだろうか・・・?
解説がなければわけがわからない!!
学校でドイツ文学を取っていて、授業で見ました。トーマスマン原作に『ヴェニスに死す』をもとに作られた作品ですが、まだ本編は読んでいません。しかし、トーマスマンの他の作品『トニオクレーゲル』や『生みの悩み』『幻滅』などは読みました。どれもものすごく難しかったです。この映画も何も分からなくては、ただいい歳をしたおじさんが可愛い少年を追いかけているだけで、わけ分からない気持ち悪い映画だなとしか思いませんでした。しかも気が付いたらおじさんが体調が悪くなって少年を見つめながら死んでいく…あれ!?よくわからない!!と思っていました。しかし、どうやら、おじさんは物語の最初の方にビーチでイチゴを食べるのですが、それでコレラに感染していたようです。このことに対して、当時ヴェネチアの人々は怒ったようですが(笑)とにかくこの映画?原作?はとりあえずいろいろ深い意味があるようです。まず、ロマン主義的考えによると美=死という考えがあるそうです…つまり美しいものは死をはらんでいるとか…つまり、物語に出てくる美少年タジオは死の国への案内人であるとか…また、そのほかにも、異国の神についてあらわしているとか…そんな神話的要素も含まれて書かれているそうです…なんともまぁ深く、背景知識がない限り全くわけのわからない映画だなぁ…と感じました…(汗)はっきり言って今までこんなに考えなければいけないような映画を見たことがなかったので、ものすごいびっくりしました。しかし、説明を聞いてみると、ものすごくいろいろなものが関わっているんだなと思いました。
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