ベニスに死すのレビュー・感想・評価
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圧倒的な美と生命に溺れてしまった男?
タイトルとギリシャ彫刻の様な美少年の映像で有名なこの映画。
午前10時の映画祭で観なければ、
多分観ることはできなかったかもしれない。
映像に拘るビスコンティーの作品だけに、
とにかく全ての衣装や調度が美しい!!
美術館のヨーロッパ絵画がそのまま動き出した様な画面。
通りすがりの貴婦人たちの衣装もさることながら
やはり主人公グスタフを魅了してしまうタージョの衣装!
その姉妹達の衣装もなんと上品で可愛い〜〜
ちょっと難しい映画だけど、
美しい映像体験として観ても良いと思います。
で、月に8回程映画館に通う中途半端な映画好きとしては
芸術家が創作活動にも家族関係にも行き詰まって、
何かを変えようと思った時には
もう自分の命の終わりが近づいていた〜
と言う話だと私は思いました。
最初の方に出てくる砂時計の話が象徴的で
「昔、家にあった砂時計は砂の落ちる穴が小さくて
砂が減って行く様子がほとんど判らない。
気が着いた時はもうほとんど砂が残っていない。」
いろんなものに行き詰まっていたグスタフ。
そんな時に出会ってしまった美少年タージョ!!
単なる美少年では無く
ギリシャ彫刻のアポロンの様に
圧倒的に神々しく命に溢れた美少年〜〜
彼は奥さんも子供いたし、ゲイという訳ではなさそう〜
自分が見失ってしまった完全無欠な美と溢れる生命力の塊〜〜
中年男はそのパワーに魅了されてしまったんだな〜
その感じはなんと無く解る。
とても残酷で悲しい話よね〜〜。
それにしても、
そんな高尚な映画にも関わらずおばちゃん目線としては
いくらリゾート地とは言え、四人も子供のいる母親が
(末っ子はまだ6〜7歳に見えたけど)
伝染病の噂の流れてる街になんでいつまでも居るの??
トットと離れるでしょ!!
周りの人たちがどんどん離れていって、
賑やかだったビーチも最後は10人も人が居なくなってた。
家庭教師らしき女性もなんで、浮浪者が屯ってる街を
子供と女性だけでウロウロしてるんだろう!!
哀れな主人公のおっさん以上にそこが気になってしまった。
そういう所を突っ込む映画では無いのは重々承知だけど
気になっちゃたら仕方ないよね〜
@もう一度観るなら?
「何年か後にまた企画上映があったら映画館で〜〜」
理解不能
リド島の海岸
若さと老い、
果たして老いは醜いものなのだろうか。
髪を染め、化粧をしても、あの醜悪なギター弾きとさして変わりはないではないか。
魂を悪魔に売り渡さないと良い芸術はできないのか
道徳と背徳
家族と孤独
美しい少年と老いてゆく男
売春婦の弾く抑揚の無いエリーゼのためにと、タージオの弾く溜めのあるエリーゼのために
山間の風景と海
喧騒のベニスと、人々が立ち去ったベニス
様々な対比が繰り返される
タージオのアッシェンバッハを見つめる瞳
タージオはアッシェンバッハの中に一縷の美しさを見たのではないか
美しさとはうわべではなく内面にあるのだと
美しさとは矛盾の上にあるのではないと
アッシェンバッハはタージオの美しさに惹かれたのではなかったか
しかし、それは愛に昇華していく
エンディングのタージオに降り注ぐようなリド島の海岸の海のきらめきは美しい
アッシェンバッハは髪から染料が溶け落ちて死んでゆく
しかし、美しさは何かを知って息絶えたようにさえ見える
二人の指の指し示した先には何があるのか
二人を結びつけたサインなのか
これを観て、リド島の海岸に行ってみようと思った
多分、生まれて初めて少年に対する愛情を観たのはこの映画だ。
美少年とは、タージオのことだとも思った。
感慨深い映画だ。
あの笑顔
午前十時の映画祭にて鑑賞。
美しい映像に美しい音楽、そして美しいタジオ!
物語としてはものすごく淡々としている。
もうおじさんが美少年にずっとモジモジしてるだけ。
だけれど、死んだように生きていたおじさんが美少年に出会ったことで生き生きとして死んでいくのがなんだか心に残る。
中盤、ベニスから帰ろうとした主人公が荷物の手違いでベニスに残らなくてはいけなくなってしまった場面、そこでの主人公の表情がなんとも印象的だ。
今まで全然笑わなかった男が、心底嬉しそうに笑うその笑顔!彼は初めて生きる意味を知ったのだと思った。
天才作曲家の老いと美への憧憬
「永遠の美」には届かない
主人公は作曲家だ。
彼のモットーは「永遠の美」「理想的な美」「完全で純粋なもの」。
人々の振る舞い,さりげない所作にも気品を要求する。
しかし大衆は彼の芸術を理解せず,挫折する。
回想に登場する友人もまた,主人公に対抗するようにして「俗」の考え方をぶつける。
そんな彼がベニスを訪れて出会ったのが,完璧な美を備える少年タージオ。
美しく,また所作からも上流階級の教育が見て取れる。
主人公はタージオに近づこうとベニスの街を彷徨うが,触れることも叶わない。
やがて主人公は伝染病に罹患。化粧が醜く崩れていくなか,夕日に向かって進んでいくタージオの背中を眺めながら砂浜で息絶える。
*
完全な美を目指す主人公にとって,タージオはまさに理想を具現化した存在。しかしいざ彼を目の前にして,自分自身こそが醜い存在であり,理想の美は自分には得難いものなのだと悟る。夕日に向かっていくタージオは,主人公にとっての理想が遠ざかっていくことを表している。主人公の目指した芸術性は,彼の死とともに敗北を迎える。その様を2時間かけてじっくりと丁寧に描写した。夕焼けのラストへ向かって、この映画はマーラーの交響曲とともに絶頂を迎える。
*
本作において,笑いというのは下等で俗で下品なものとして描かれた。
笑う者は俗であり,上品な人間は笑わない。
主人公も無表情を貫くが,自分の死を悟ってようやく笑う。
それは主人公が俗へと転落した瞬間であり,またそのことを自覚した自らへの嘲笑でもあった。
過去に影を持つ老作曲家が、避暑地ベニスで尼神渚似の美少年に心奪われ...
何が起きているのか分かり辛い
総合50点 ( ストーリー:50点|キャスト:75点|演出:40点|ビジュアル:70点|音楽:75点 )
「苺は危険、この暑さだから」
この前振りから始まる伏線を見逃すと彼がなぜ体調を崩したのかがわからない。突然始まる消毒に疫病の報告があるが、そもそも彼が体調をそんなに崩しているとも思えなかった。コレラということだが、それらしい症状が主人公からは感じられない。まして死んだとは思わず、ただ寝ているだけだと思った。
タッジオのことにしてもそうで、主人公が彼に対して恋愛感情や性欲をもっているなんてことはわからなかった。
このように物事をはっきりさせずに淡々と外側から展開を映すだけの演出では、一体何が起きているのか伝わってこない。だから物語がさっぱりわからない。若いころに初めて観たときは全く理解できなかった。結局後でネットで調べてその内容を理解することになる。
原作は未読だが、調べてみると言いたいことはなんとなくわかる。年齢を重ねて若さと健康をなくし、芸術を追及して仕事で行き詰まり、そんなときに保養地で会った純粋に若さを楽しむ美少年は自分が無くしたものを全て持っていた。それに対する憧憬と美に引き寄せられる自分。特に私も年齢を重ねてくると理解できる部分が昔よりも増えていた。
原作を知っている人はいいだろう。だが内容を知らず調べもせずに映画を観ても何が起きているのかさっぱりわからないしただ退屈。何が起きているのか主人公の心の内を物語としてわからせなかった演出は、芸術性に傾斜しすぎているように感じる。
美しく老いる人はまずいない
芸術作品
ひたすら美少年をつけ回すオッサンの話……
と言いたいけれど、なぜかそれが美しくて見とれてしまう。オッサンにとって美少年は一種の芸術であり、美の追求や若さへの憧れとして見ている。決してショタコンではない。(たぶん)
疫病の流行に恐怖しつつも、結局は国から離れることなく死を選んだ。もし、美少年が少しでも嫌な顔をしたり、あからさまに不快をあらわにしていたら、オッサンは帰っていたかもしれない。そして疫病にかかることなく、しばらくは普通に生きていたはずだ。
しかし何のつもりなのか美少年は、いつだって優しく微笑んでオッサンを誘惑するのだ。
あざとい。美とは時として凶器である。
何度も号泣しました。
美しい恐怖
悪く言えば
美少年に惚れこんでしまったおじいちゃんが130分間もじもじ彼を追いかけまわして挙げ句死んでしまうという色んな意味ですごい映画。
今の時代(じゃなくても?)に見ようものなら、通報されるんじゃないかとか、少年に毛嫌いされるんじゃないかとか、少年の母上に嫌われるんじゃないかとか、イロイロ考えてしまう。
だがこの映画でビックリなのが、以上のような事がないどころが、少年とおじいちゃんが会話をする事すらない。セリフも少なく、ただベニスで過ごすタージヒ少年の家族と主人公が淡々と写されていく。
追いかける過程の中で何度も何度も死の影がちらつく。一見、不自然なほどに話の中に伝染病の話題が出てくる。後半だんだんと背筋にくるような印象が強くなってくる。知らず知らずの間に主人公は病にかかっている。そして題の通り、ベニスで死んでしまう事に。
少年は微笑みかける。
タージヒ少年の美しさはもうそれはそれははんぱじゃない。妖怪じゃないかと思ってしまうほど。主人公は一喜一憂しながら少年を追いかける。この恋というのがまた。同性愛的でない。相手が少年なのと、妖怪かと思うほどに美しいからなおさらそう思う。女でないからその感情に性的な感じが漂わず(あくまで私の意見だが)とても神聖な領域の話にみえてくる。実際にタージヒ少年は天使とか悪魔のたぐいにも見えてしまった。彼の微笑みが主人公を死へ導いた。老いという苦しみを与えた。考えるほど奥が深く、深く深く色んな意味が詰まっている映画なんだろうと思った。
印象的だったシーン。
主人公がベニスに留まる事を決め、ボートにのり、笑顔が満開!もらい笑いしてしまった。結局苦しい死を迎えるわけだけど、死ぬ前にこんなに本気の恋が出来た事はとても幸せだったのかもしれない。
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