「途中でネタが尽きたと感じるくらい話が脱線しまくり、中途半端なラストに終わったのが惜しいと思います。」エイリアン・ビキニの侵略 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
途中でネタが尽きたと感じるくらい話が脱線しまくり、中途半端なラストに終わったのが惜しいと思います。
映像は、登場人物の感情を台詞抜きでしっかり表現させる点で、将来性を感じさせてくれました。抑制の効いた絡みのシーンでは、かえって官能的。ちょうど日本の漫画で言えば『すんドめ』のようなもの。
そして大半のシーンが監督の狭い自室で撮影されたとは思えない、緻密な演出とカメラワークが巧みです。
但し、後半からの精子を巡るエイリアンとの「攻防」では、途中でネタが尽きたと感じるくらい話が脱線しまくり、中途半端なラストに終わったのが惜しいと思います。
いいと思った点は、エイリアンをごく普通の美女として描いているところ。美女エイリアンを演じるハ・ウンジョンはなかなかのセクシー。下着止まりの露出は、少々残念でした。
この美女は時々、奇怪なエイリアンらしさが露天するものの、主人公のヨンゴンが出会った当初は、何者かに追われる謎の美女という描き方だったのです。正義漢溢れるヨンゴンが、この美女を無条件に助けるのも頷けました。
また、二人きりになったときのロマンチックなムードも悪くありません。何よりもエイリアンのミッションとして24時間以内に受精するという制約にとわられずごく普通に振る舞っているところが、いいですね。本ネタへ移行する前のフリとして、あまりこれ見よがしだと興ざめしてしまいます。
ちなみに、ヨンゴンを演じるホン・ヨングンとヨンゴンに襲いかかる地球防衛隊の面々はテコンドーの使い手で、ノースタントで本格的な格闘アクションを見せてくれました。なかなかの迫力です。
最大の突っ込みどころは、美女が誘惑しているのに、真に愛する人に出会うまで己の貞操を誓ったヨンゴンは、美女エイリアンの誘惑を素直に受け付けないのです。エイリアンの誘惑はエスカレートしていき、ヨンゴンをSMプレイのように縛り付けて、拷問し合体を迫ります。でもいくら貞操を誓っていたとしても、あんな美女が下着姿で迫ってきたら、誰だって喜んで飛びつくのに決まっているでしょう。なにの我慢し抵抗するヨンゴンの心理が分かりませんでした。美女エイリアンだって、縄で拘束しているのだから、そのまま襲えば済むことでしょう。だんら場を持てあまし気味なので、監督はあんなことや、こんなことをいろいろつぎ込んで、時間稼ぎしているようにも思えたのです。
この間の展開で、ラブコメから始まって、SF、ホラー、コメディ、サスペンスがいろいろ詰め込まれて、観客を何とか楽しませようと涙ぐましい試みが展開します。それは若さ故の演出でしょうか。もっとラブコメか官能的に絞り込んでじっくり描いた方がよかったのではと思います。
あんなに頑張って拒絶したのに、美女の肉体がエイリアンによって気絶させられると、ヨンゴンは我慢できずにレイプしてしまいます。なんたる矛盾でしょうか(^^ゞ
その結果、人類を滅亡に追いやる自分そっくりのエイリアンができてしまうのですね。じゃあどうするのかというのが、ヨンゴンはとりあえず必死に追いかけて対決しようとします。でもどうも勝負になりません。ではではどうなるのよという先が見えずじまいでしっくり来ない終わり方でした。
本作は、どうも男性不信がテーマの作品のようです。主人公のヨンゴンは結局何も救えていません。愛する女性立てた貞操も、自分自身も、地球も。メインストーリーは主人公の精子を奪おうとする話ですが、当の本人はエイリアンの実態について完全には把握しきれず、女としてしか認識しえなかったのですね。そんなストーリーに垣間見えるのは、男って単純で、何も分かっちゃいないんだという監督自身の自嘲なのでしょうか。
本作の隠れたテーマとしては、「時間」が埋め込まれているというのです。それは、男と女で流れている「時間」が違うという意味です。確かに美女エイリアンとヨンゴンとでは全く違う時間が流れておりました。二人の思いはすれ違い交わることはない。だからこそ一瞬のふれあいの刹那を求め合うのだというメッセージは、確かに美女エイリアンがSMプレイに暴走するまでは、しっかり描けていたと思います。
若い監督だから、色々試してみたいのは分かりますが、ワンテーマをじっくり掘りさげる演出を発揮できればねもっと伸びることでしょう。実力は確かなので、次回作に多に期待できそうです。
ところで要所になぜか耳寄りな健康情報が、散りばめています。健康オタクは必見ですぞ。