「本作の予定調和路線は強力。何が起こってもベラは殺さないのだ!」トワイライト・サーガ ブレイキング・ドーン Part 1 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
本作の予定調和路線は強力。何が起こってもベラは殺さないのだ!
ヴァンパイアと人間の禁断の恋というソフトタッチなヴァンパイア映画を構築して人気のシリーズが、いよいよ最終章に突入しました。
二作目から禁断の恋という基本線から脱線し、ヴァンパイアとオオカミ族の対立抗争に重点が写り、ベラとエドワード、そしてジェイコブの普通にはあり得ない仲良し三角関係を描いてきました。冷静に見れば、かなり無理して続編を引っ張っているのはありありで、強引なラストへの持っていき方には、白けてしまったことも多々ありました。
しかし、イケメンのロバート・パティンソンと可憐なクリステン・スチュワートが紡ぐ甘いラブストーリーには、そんな筋の荒さを吹っ飛ばして余り有るロマンチックさが本作の人気を呼んでいるのでしょう。
前作で揺れに揺れたベラはエドワードを選択。決死の思いで結婚式を迎えます。幸福絶頂なふたりのラブラブのシーンは、原点回帰して禁断の恋がようやく成就したかような、うっとりするシーンが続出でした。特にハネムーンのシーンが素敵です。リオデジャネイロの洋上に浮かぶ離れ小島に一件だけ佇むコテージには、ゴージャスな家具調度品に加え、海を庭としているベッドルームが二人の夜を甘く祝福しておりました。
そして、決して本作はジェイコブのことを忘れてはいません。結婚式の夜、エドワードはベラにプレゼントとして、密かにジェイコブを式場近くの森に呼び、密会させるのです。ほとんど恋人が再会するかのような抱擁を重ね合う二人を陰からじっと見守っていたエドワード。一体どういう心境なのか理解できませんでした。
そんな幸福なふたりで終わらさないのが、本作の予定調和路線(^^ゞ。ベラは、結婚前も夢で参列者がヴァンパイアに襲われて、屍の山となる妄想に囚われたことがありました。そんなベラの胸騒ぎが的中するかのように、何と結婚二週間目でまだハネムーンを楽しんでいるうちに妊娠が発覚。慌てて帰国して、仲間のヴァンパイアの医師に診せると、このままでは母体が持たないというのです。それでもベラは、子供を産むことにこだわります。ここで疑問。ヴァンパイア族のお産は、こんなに大変なのでしょうか。他の女性は普通に産んでいるみたいですけどね。
たぶんこの設定は、結婚で幸福絶頂のベラと、子供の出産の犠牲になり、急激に衰弱していく姿を対比させたかったのだろうと思います。もちろんエドワードも彼女を延命しようと必死になりますが、むしろジェイコブのほうが頑張った頑張った感じがいます。
なんでジェイコブが出てくるかというと、ベラが産む異種族の交歓によってできた子が人間界やオオカミ族を滅ぼす忌まわしい存在としていきなりオオカミ族のリーダーが決めつけたからです。オオカミ族は、ヴァンパイアとの協定を無視して、ベラと子供の命を襲おうとします。それに反対し、群れをぬけてでもベラと子供の命を守ろうとしたジェイコブの活躍が目立ちました。
旺盛な胎児の「食欲」に、栄養を吸収されたベラは急速に衰弱します。そのメーキャップの変化が凄くリアルで引き込まれました。但し予定調和路線の本作は、かなり強引でもベラが生き返ることが、見る前から予想がつくので、少々興ざめしてしまいます。案の時…(^^ゞ
それでも、輸血でなく血液をジュースみたいに飲むと、ベラと胎児が元気になる設定には笑ってしまいました。もう何でもありですね。輸血用の血液もすぐ底が尽きてきます。二人が暮らす建物の周りは、オオカミ族が囲って一匹たりとも通せません。そんななかでエドワードの仲間の医師は、決死の脱出を図ります。このシーンは良かったのですが、出産後にオオカミ族が総攻撃を企てたとき、ジェイコブの説得一発で撤退してしまうのですね。だったら命がけの脱出シーンなんて、無用ではなかったかと思えてしまいます。
コレデめでたし、めぜたしのラストかと重い気や、覚醒したベラにあっと驚く異変が起こっていたのです。ああしまった!こんなラストシーンを見せられたら、続編が気になるではありませんか。
またエンディングテロップ中に、ヴァンパイア族の族長らしい人物が、「エドワードたちの能力が欲しい」といったことも気になります。さすがに続編を前提にした最終章だけに、大きな謎を残して大団円への興味を引き立てられる内容でした。